俺の伝説は15歳の頃からはじまった。

俺の伝説は15歳の頃からはじまった。


 モンジンの話を黙って聞いていたバロールとジャミの二人は、通信魔法を使い、


(……大変だぞ、ジャミ。このガキがその気になったら、私たちごときワンパンだそうだ)

(そうか。大変だな。では、恐いから、距離を取ることにしよう)


 シカトを貫徹したまま、モンジンに背を向けて、距離をとろうとする二人。

 その後ろから、モンジンはトコトコとついてきて、


「おい、こら、聞いてんのか。281番、282番。……あれ? 番号、あってるよね? 俺、間違ってる?」


 言いながら、タタタっと、二人の前にまわり込んで、番号札を確認すると、


「あってるじゃねぇか! この野郎! 281番、282番! シカトすんな!」


 わめいているモンジンの横をスルリと抜けて、また距離をとろうとする二人に、まだまだしつこくついていくモンジン。


「あのなぁ、俺がその気になったら、マジで、お前ら一秒以内にあの世行きなんだぞ。そこんところをちゃんと理解しろ。いいか、とにもかくにも、俺は怒らせないほうがいい。いや、怒らせない方がいいなんてもんじゃない。とかく、俺だけは怒らせちゃいけない。俺はヤバい。あまりにヤバすぎて、どのくらいヤバいかは言えないが、まあ~、とにかくヤバい」


「「……」」


 全力でシカトを続ける二人に、モンジンはひるまず、


「まだ俺をシカトし続けるとは、根性がある連中だ。よーし、いいだろう。俺の何がヤバいか、具体的に教えてやる。まったく、俺に俺のヤバさを数えさせるとは……とんでもなくヤンチャなボウズ共だ。まあ、その神をもおそれぬ大胆不敵さだけは認めてやらんでもない」


(ジャミ、あのバカ、どこまでもついてくるぞ。どうする)

(放っておけ。関わったら負けだ)


「俺の最強伝説は、15歳のころから始まった。あれは、日差しの強い初夏だった。いや、ポカポカとした春だったかもしれない。とにかく、15歳のころ、地元で有名だったワルの子分をワンパンで沈めたところから、俺は俺の中に潜む獣に気付いたのだ。俺は、とにかくヤバかった。研ぎ澄まされたナイフのようだった。それでいて、どこかで気品を感じさせた。だからだろう。いつだって、美女が周りに集まってきて、俺の取り合いをする。ぁ、いや、やっぱり、秋だった。物悲しさが漂う秋だった。そう記憶している」


 虫酸が走りまわっていそうな顔をしている二人の心情などおかまいなしで、モンジンは、


「それからなんやかんやあって、俺は最強になった。俺は、ヤバい。とにかくヤバい。ケンカは、常に負けなし。俺は強すぎる。これまでの人生で、何回か、『あれ? これ、ヤバくない?』って思ったことあったけど、結局ぜんぶ、なんやかんやで、最後はワンパンだったからね」


 『うるっせぇカスだなぁ』という顔をしている二人に対し、モンジンはとどまることを知らず、


「あと、基本的に、悪い奴はたいがい知り合いだ。俺はアウトローがすぎる。自分でも自分が時々恐くなるくらいだ。いっておくけど、俺、『アッチの界隈じゃあイカれている事で有名なアース姉弟』とも知り合いだからね。おい、そのノーリアクションはなんだ? まさか、お前ら、アース姉弟、しらない? ウソだろ? 遅れてんなぁ。しょうがないやつらだ。いや、もう、ほんと、あの二人はヤバいぞ~。どっちも、イっちゃっているからな。そんなのと知り合いの俺、マジやべぇ」


 ペラペラと、


「俺ってさぁ、ほら、自分が分かるやつじゃん? 自分のことが、ちゃんと分かる系男子的なメンズじゃん? で、俺は、俺のことを、とにかくヤバいやつだと自覚しているわけ。だから、いつも、周りに気を使って、この研ぎ澄まされたオーラを隠しているってわけよ。どうよ、この配慮。見た目、能力、人格。どれを取っても完璧。なあ、お前らもそう思うだろ?」


 マシンガントークが止まらないモンジンに対し、バロールとジャミの二人は、


(反射的に手が出そうだ。助けてくれ、ジャミ)

(とにもかくにも、目をあわせないように注意しろ。この危機的状況下ではそれしか手はない)


「あと、意識とかも超高い。俺の目標を聞いて震えるといい。俺の当面の目標は『存在値1京』だ。どうだ、ビビるだろ? ちなみに、1京をゴールにしているんじゃなく、あくまでも当面の目標が1京というだけだ。ここ重要」



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