大好きなおじいちゃん。

大好きなおじいちゃん。


 センは、間違いなくアダムに惚れている。

 ソレは疑いようのない事実だが、しかし、アダムのことを『狂信者感が強すぎてダルい』と思っているのもゴリゴリの本音。

 そもそもにして、『相手の全てが完璧にズレ一つなく大好きで、死ぬまで永遠に、どこまでも、いつまでも、とにかく、ずぅぅぅっと一緒にいたい』――なんてことは、尖った個人主義者のセンでなくともありえない事。


 すべてはバランス。

 そういう意味で、現状(常にアダムとシューリが側にいる)が限界。



 ――ちなみに、シューリの場合は、その突飛な性格のせいで、結果的に、はからずとも、常時、『センにとっての、いい感じの距離感でいてくれる』から、側にいられても、実は、そこまで苦じゃない(シューリにもバリバリ惚れているため、かりにシューリがグイグイきたとしても我慢はできる)。



「百歩ゆずって、入れ替わりなら認めなくもない――けど、それは、あいつらが了承した場合。だから、俺じゃなくて、あの二人に頼みなさい」


「それは絶対に無理だから、ジーサマに直訴してんじゃないすかぁ」

「あのアダムって人、おじいちゃまを見る目が、致命的にイっちゃってるもんねっ☆」


 もし、誰かが、アダムに、『そのポジション、ゆずれ』と言ったらどうなるか。

 結果は火を見るより明らか。

 世界を殺す戦争のはじまりである。


 ――つまり、何が言いたいかといえば、

 センは、百歩どころか、一歩もゆずっていないのである。


 麗理のことも、界理のことも、心の底から愛しているが、

 それとこれとは別問題なのだ。


「終理も大概ラリっているけど、あのアダムってやつは、それ以上にヤベぇ。ジーサマ、あんなの側に置いちゃダメすよ」

「そーそーっ。側におくなら、『アダムみたいな狂気的ジャンキー』や『終理みたいなドがいっぱいつく変態』じゃなくて、私みたいに、可愛くて無害な女の子の方が絶対にいいですっ☆」



「無害ねぇ……昔、『俺の奪い合いだ』とか言って大ゲンカして、第一ベータを崩壊させかけたのは、ドコのどいつらだ~い? お前らだよっ!」



 彼女達にとって、センは、大好きでたまらないおじいちゃん。

 おしめを替えてくれたこともあって、ごはんをつくってくれたこともあって、病気になったときは看病してくれたこともある。

 ピンチになった時、颯爽と現れて助けてもらった事だって何度もある。

 『彼女達が産まれた時には、既に支配者としての激務に忙殺されていた朝日』よりも、センの方が、彼女達と一緒にいた時間は長かったりもする。


 ※ ゼノリカ(しっかりとした統治機構)がある上位アルファなら、優秀な下に任せる事が出来るため、天帝の仕事も、それなりに楽だが、ベータ程度の世界では、上がしっかりしていないとしっちゃかめっちゃかになる。

 例えるなら、

 ゾメガたちは、超進学校の校長で、

 朝日は、モンスターペアレンツが多い幼稚園の保育士さん。

 『ベータをアルファに格上げするための仕事』がなくとも、大変で大変で仕方が無いのが、第一ベータというブラック企業。




 Q センは助けてくれなかったの?

 A 朝日は『センがいずれ転生してしまう』という事を、キチンと『重く』とらえていたため、なるべくセンには頼らないようにしていた。センに頼ればどんな問題でも簡単に解決してしまい、『このままだと、センがいなくなったら何もできないハリボテになってしまう』と危機感を感じたため。


 そんな理由もあって、世界運営の協力を拒まれたセンは、朝日の家族のサポートに重点をおいていた。

 結果、朝日の娘たちは、実の父である朝日よりも、センと一緒にいる時間の方が長くなってしまったのだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る