センエースという人格破綻者。

センエースという人格破綻者。


 ちなみに、補足しておくと、

 夕日の孫も、一般人。

 孫の孫も一般人。

 夕日の家系は、一応、『尊き天帝の一族』として崇められてはいるが、『特に何か特別な事が出来る』というワケでもないため、『凄まじい実力で敬意を集めている』というワケではなく、どこか日本の天皇のような扱い。

 間違いなく特別ではあるが、『天帝の一族という偉大で高潔な立場なのだから、~~などはするべきではない』というルールでがんじがらめになった『不自由なだけの特別』という感じ。






 ――センが、小さな太陽に腰を下ろすと、麗理と界理の二人は、センの左右について、当然のようにスルっと腕をからめた。

 センがすわっている『小さな太陽』の左右に出現した『小さな惑星』が麗理と界理のポジション。


 必要以上に体を密着させて甘えてくる二人に対し、軽く『邪魔だなぁ』と思いつつも、そんなトゲのある発言は決して口にはしない。

 若干、面倒臭いし、懐かれすぎて普通に困ってはいるが、

 しかし、なんだかんだ、結局、センは、彼女達を愛している。


「つぅか、アダムと終理だけじゃなく、わたしらも側仕えにしてほしいんすけど」

「ていうか、おじいちゃまの側仕えが二人って少なすぎですっ。最低でも、三人は必要だと愚考しますっ☆」

「おい、なに、自分一人だけねじ込もうとしていやがる。こっちは、『お前も一緒に』と提案してやっているというのに」

「お姉ちゃん、穿ちすぎだよっ。私は、ただ『圧倒的な善意』で『せめて私だけでも』って提案しただけだよっ。先の『お姉ちゃんを蔑(ないがし)ろにするかのような提案』の『どこらへんに善意が干渉しているのか』については、お姉ちゃん自身に深く考えてもらう必要があるけれど、とにかく、善意による提案だったことは疑いようのない事実なんだよっ☆」

「……本当に、お前はいい度胸をしている」


 ピリっと空気がヒリついた。

 イラつき顔の心理と、

 テヘペロ顔の界理。


 そんな二人を左右に抱えているセンは、溜息まじりに、


「はいはい、ケンカしない。あと、何度も言わせないの。俺は身軽な方がいいの。常時そばにおいておくのは、二人が限界なの。おじいちゃんは、人格が正式に破綻している『ボッチ史上主義者』だから、『周りに人がいっぱい』は耐えられないの」


 と、穏やかな口調で断言する。


 そもそも、センは、『あの二人と常に行動を共にしている』のだって、本音で言えば『イヤで、めんどくさい』のだ。


 しかし、アダムには、惚れてしまったし、麗理や界理以上にグイグイこられたので、仕方なく一緒にいる。

 心底から惚れた相手といえど、『ずっと一緒にいたい』とは思わないのが、センエースという人格破綻者。


 ――学校に通っている時から、ずっと、『そうなったから』ではなく、事実、常に『自らの意思』で孤高を選んでいた真正の変態。


 とんでもない責任感はもっているし、ソウルゲートの時のような『永遠に近い時間を完全なる一人で過ごさなければならない』というのは普通にイヤ。

 しかし、『べったりと群れる』という状態形式が、概念レベルで、とにかく嫌い。

 『大量の人間と常に一緒にいる』のと『永遠にソウルゲートで生活する』のと、どっちがいいかと聞かれたら、『悩んだすえに後者を選んでしまう可能性がある』というほどの変態、それがセンエース。


 『繋がっている』と理解できる『いい感じの距離感』を保つのが、センエースが望む理想的な関係性。


 一言で簡単に言えば、『結婚するにしても、別居婚か終末婚じゃなきゃイヤなタイプ』。

 強靭な精神力を持っているので、同居にも、当然、『耐える』ことはできるが、あくまでも『耐えられるだけ』で、永遠に『慣れる』ことはないだろう。


 シューリもアダムもめんどうくさい女だが、

 センエースも、たいがい面倒臭い男なのだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る