ようやく予選終了。

ようやく予選終了。


 ゼンとフッキの闘いを見届けた『セン』は、 


「うーん」


 と、軽く伸びをして、


「さぁて、予選はこれで終わりぃっと。――うむ。なかなか収穫の多い一日だったな」


 ボソっとそう言いつつ、心の中で、


(冒険者試験なんざ、ただ時間を無駄にするだけの、クソしょうもない『お使いゲー』にしかならんと思っていたが……くく……思いのほか楽しいイベントが起こってくれるじゃねぇか)


 予選で起こったアレコレを思い返しつつ、


(掌の上で踊っている感がハンパないが……しかし、おかげで、シルエットが見えてきた。ただでは踊ってやらねぇ。全部を糧にして、飲み込んでやる)


 などと、覚悟を固めていると、後ろから、シューリが、


「確か、本戦まで、ちょっと時間が空くんでちたっけ?」


 と、声をかけてきた。

 センは、懐からメモを取り出して、


「本戦開始は三日後だな」


「くぁ~……たるいでちゅねぇ」


 アクビをかましてから、


「で、それまでの間はどうするんでちゅか? また、引きこもってニートやるんでちゅか?」


「――『鍛錬に勤しむ』と言っていただきたく存じんす、姉様」


 軽く反論しておいてから、


「時間が余れば、それも考えるが、とりあえず、いったん、ゼノリカの様子を見ておこうと思っている。強くなれと命じてから、はや数日……どのくらい強くなったか、見ておきたい」


「数日で強くなったら世話ないでちゅけどねぇ」


「なんの下地もないヤツなら、確かにそうだが、あいつらは違う。九華より上の連中は、全員、ほぼそれぞれの『現世における限界値』まで磨いた上で、それでも、弛むことなく、基礎を積み続けてきた頭おかしい連中だ」



 『ジャミ以外の九華』や、『シューリ以外の五聖命王』は、すでに、成長限界(100%ではないが)に達している。

 あとは、『神種が芽吹く』か『凶悪なきっかけによって解放されるか』でもしない限り、今以上に強くなることは、ほぼできない(カンストしている訳ではないが、成長はおそろしく緩やか。数百年単位で修行して、存在値が1あがるかどうか)。


 ※ ちなみに、神種が芽吹くかどうかは、ほぼほぼ運なのだが、存在値が高い方が芽吹きやすいし、何もせずにボーっとしているより、高次の鍛錬をし続けた方が芽吹きやすい。



「あいつらの『成長限界』は、『これまでの現世基準の成長要素』しかない場合の話――」



 レベルアップに必要な経験値は、当然だがレベルが上がれば上がるほど必要になってくる。

 ちなみに、上位者になってくると、誰でも、センほどではないが、いくつかなら、成長チートを有している。

 というか、『成長超早い』や『成長超々早い』くらいの成長率UP系スペシャルなら、ゼノリカの上位者だと、ほぼ全員が保有している。



 ちなみに経験値は、『(回収した魂の量)×(回収時の危険度+その他無数の条件)』で計算される。

 つまり、『強い味方の介護を受けた事によるパワーレベリング』では、さほど経験値は入らない(かなりのマイナス補正がつく)。

 強いモンスターを『強者』が半殺しにして、『弱者』が安全にトドメだけを刺しても、意味がないのだ(まったく経験値が入らない訳ではないし、召喚獣で削ってからトドメをさした際などは、また別の計算式が用いられるため、一概には言えない)。



 『回収時の危険度による補正』は莫大で、かつ、その割合は、『敵の経験値』に比例して上がってくる。

 レベル後半になって、高レベルのモンスター狩りを始めるようになってくると、『危険度補正』を積んでいないとまともな経験値にならないという状況になってくるのだが、強くなればなるほど、敵を倒す際の危険度は下がっていく(結論。ゴート・ラムド・セノワールの成長率は異常)。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る