我らは、すべてを包み込む黒き後光。
我らは、すべてを包み込む黒き後光。
「さあ、可能性を持つ者よ。その手で、彼らを食らい、己の不備を補いたまえ」
淡々とそんな事を言うアビスの目を見つめながら、
ゼンは言う。
「……おいおい……いままで、そこそこ合理的な事をほざいていたってのに……ここにきて、まさかの『とんでも理論』炸裂……高低差ありすぎて、耳キーンなるわ」
「高低差? おかしなことを言う。私は常に一貫している。決して揺るぎない」
「まあ、ある意味で、一貫してんな……力を見せつけてから、ダークサイドへの勧誘。はっ……なんつぅ、悪役のテンプレ……こんな状況なのに、つい笑っちまうぜ……」
「悪こそが、『我ら』の指標。『底』まで『堕ち』なければ、『力の真理』には届かない。つまり、私が悪の模範であることなど、当然の話。さあ、その手で彼らを殺せ。さすれば、君に、我らの元にくる許可をあたえん」
「……われ……『ら』……?」
「すべてを包み込む、黒き後光。正当なる闇の支配者。我らは、超魔王軍ゼノリカ」
「っっ?!」
アビスの言葉に、ゼンは呆けた顔をして、
「お、お前……ゼノリカ……なの……」
「? その言い草、まさか、ゼノリカを知っていたとでも?」
「……まあ、一応。詳しくはないけどね」
時間の経過で、少し回復したので、
まともに喋るくらいは出来るようになったゼン。
立ちあがり、服のホコリを払っている彼に、アビスは、
「信じられん。我らは表に出ない影の存在。……君は、いったい、どこでゼノリカを知った」
「お前らの大将を育てた『神様』に聞いた。聞いたっていうか、倒せって言われたよ」
「くく……はははっ!」
アビスは大声で笑い、
「面白い冗談だ。まあ、真実を言いたくなければ言わなくともよい」
「……冗談じゃねぇんだけど……」
「まともに取り合うのも大人気ないが、一応言っておこう。偉大なる超魔王『ゾメガ・オルゴレアム陛下』は全世界の頂点であり、その『上』など存在しない。つまり、ゼノリカを倒せる者など存在しない」
「……へぇ」
テキトーに返事をしながら、
(超魔王は神様よりも強いのか? あの神様より強いやつなんて、いるとは思えないんだけどなぁ)
などと、心の中でつぶやいた。
強くなるたびに、ゼンは、『神の遠さ』に対する理解を深めていっていた。
ほんのわずかな時間、それもちょっとした会話しかしていないが、
それでも、あの時感じた『底しれない圧力』は、今でも鮮明に思い出せる。
――『あの遠さ』に届く者がいるとは思えない。
そんな懐疑的な目をしているゼンに、
アビスは、ふふんと、小馬鹿にするように、鼻で笑いながら、
「言っておくが、ゼノリカ内では、この私ですら下っ端の下っ端なのだぞ」
「……ぇ、マジ……」
ここで、ゼンは、素直に驚いた。
今のゼンは、まだまだとは言え、『表では最強のハルス』を遥かにしのぐ圧倒的な力を得ている。
アビスは、そんなゼンでも、足下にも及ばないバケモノ。
もちろん、攻撃力が100億を超えているエグゾギアさえ使えれば、
エメラルドスカイアビス・リザードマン(強)など、ワンパン確定のクソザコだが、
先ほどアビスから教わったとおり、『積み技』は、対策された時点で死にスキルであり、
『対策の対策』を怠った方が『正式な弱者』となるのが、戦場のルール。
命がけの戦闘で『たられば』に意味はない。
『こうだったら勝てる』など、クソ以下の言い訳。
~~ロマン砲、撃てなきゃただの、飾りかな~~
つまり、現状、ゼンは、アビスよりも、間違いなく弱者。
――そして、ということは、もし、アビスの言う事が事実だとすると、
(俺は、下っ端の下っ端にも勝てないザコ以下のザコってこと……だが、ありえるか? このトカゲは、あのハンパなく強かったホルスド・ガオンすらかすむ、俺が今まで見てきた中では、神様を除くと、ぶっちぎりで最強のバケモノなんだぞ……そんなヤバい怪物でも下っ端にしかなれない組織なんて……いくらなんでも、ありえるわけ……)
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