狂気のマッド召喚士ラムド・セノワール。

狂気のマッド召喚士ラムド・セノワール。



「さっきの俺の発言は冗談でも悪ノリでも一時の感情でもねぇ。俺のフローチャートに則った完璧かつ正式な宣戦布告。お前らの国は死ぬ。俺が殺す」



 ラムドの言葉に呼応するように、揃って魔剣を構えるスリーピース・カースソルジャーを見て、


 各国の首脳陣は、一斉に剣や杖を抜いた。

 もはや、こうなってしまえば、『リーンが止めるだろう』とは思えなかった。

 あの化け物三体が相手となれば、リーンでは止めきれない。

 となれば、自分たちの身は自分たちで守るしかない。



((((……死闘になる……))))



 ――ここにいるのは、全員が各国の上層部。

 つまり、全員『冒険者』。

 誰もかれもが、この世界では破格の力を持つ超人。

 『親が偉いさんだったから』という理由だけでここに来た者は一人もいない。


 ゆえに、みな、カースソルジャーの力が正確に理解できる。


 会議室は、ピリピリとした死の空気に包まれる。

 膨れ上がり続ける緊張感。


 この極限状態で、最初に動いたのは、他の誰でもないサリエリだった。

 サリエリは、


「ラムド! やめろ!」


 ラムドの胸倉をつかみ、


「気持ちはわかる! 貴様が怒ってくれて、正直、嬉しいとも思う! だが、やめろ! このままでは戦争に――」


 最後まで言わせてもらえなかった。

 サリエリは、ラムドの魔法(呪縛ランク6)でアッサリと拘束され、その場に転がされた。



「サリエリ、俺はいま、『途方もない繊細さ』を要する『非常に高度で政治的な外交』をしているんだ。一介の武将でしかないお前の出る幕はない。黙って寝てろ」


 言ってから、ラムドは、各国の頂点――冒険者たちを睨みつける。

 明らかにブチ切れている鬼の形相。

 とても外交官の顔ではない。


 まず、セファイルのサーナ王女が口を開いた。



「と、とてつもない強さを持った召喚獣ね……それで私の弟を殺したのかしら?」



 震える体を精神力で抑えながらそう問いかけてきたサーナ。


 ラムドは、


「ああ。こいつらが殺した。正確には呪い殺した」


「……でしょうね。……流石に、あのバカでも勝てないでしょう。あのバカでも、一体を相手にするのが精々……それを三体も……とんでもない召喚能力……まさか、ラムド・セノワールが、ここまで非常識な召喚士だとは思っていなかったわ。……けれど、あなた、勝手な真似をしていいのかしら? あなたの女王様が、随分と御怒りのようだけど?」


 サーナのパスで、ようやくリーンは立ちあがる。

 ガターンっとイスを吹き飛ばす勢いで地面を踏みしめる。

 ここまで、ことごとくタイミングを失っていたが、

 もはや、なんの障害もない。

 リーンは、


「ラムドぉおおお!!」


 怒りを爆発させて、ラムドを睨みつけ、

 臣下の非礼をどう詫びるべきかと考えながら、


「そこまでだ! もういい!」


 王としての役目を果たそうとしているリーン。

 戦争を起こさせないために、どうするべきか、何を言うべきか、必死に頭を振るっているリーン。


 そんなリーンに、しごく呑気な顔で、


「もういい? 何がです?」


「やりすぎだ! このままでは戦争になる! そこまででいい! それ以上はやめろ!」


「……聞こえませんでしたか? もう宣戦布告は終わっています。『このままでは』もクソも、戦争はとっくに始まっているのですよ。記念すべき世界大戦の開催国代表として、これから忙しくなりますね、陛下♪」


「ふ、ふざけるなぁあああ! わしが、なんのために、いままでぇ!」


 そこで、ラムドは、片手でリーンの口をふさぐ。

 ほとんど力は入れていない。

 しかし、リーンはラムドの手をほどけない。


(なっ……なんだ、この力……ラムドの肉体強度は、私の10分の1以下……なのに、なぜ、こんな……)


「もう少し、ウツケの振りを続けたかったが……こうなったら、もう終わりだ。お前がナメられているだけなら、まだ静観できたが、あのバカどもは、境界線を飛び越えて、『俺の研究結果』まで奪おうとした。ならば、終了だ。召喚キチ○イのフリは、これにて終了。ここからは、ド直球の魔王国宰相として――世界の支配構造を再編する狂気のマッド召喚士ラムド・セノワールとして動かせてもらう」



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