ゼノリカの天下、百済の頭目

ゼノリカの天下、百済の頭目




 カースの防御力は決して低くない。

 戦闘力はカス(現闘でも中の上くらい。神闘視点だとクソ以下)だが、ステータスは、現世基準だと、どれも高水準。

 体力はそれなり。硬さも申し分なし。そして、俊敏性が高いので、その気になれば回避タンクとしても使える(回避タンクとして優秀という訳ではないが)。


 本来のカースソルジャーは、『敵の周りをチョロチョロと走り回って、なるべく長時間生き残り、相手にデバフをなすりつけること』が目的の召喚獣。

 つまり、そう簡単に殺せる召喚獣ではない。


 ――だというのに、

 一瞬で、三体が戦闘不能状態にまで陥ってしまった。


「三体を一度に殺してしまうと完全消滅してしまうそうだから、一匹だけ半殺しで許してやったわ」


 UV1の言うように、二体は完全に消滅してしまったが、一体は、ズタズタのハチの巣状態で膝をついているものの、どうにか生き残っていた。


「私の慈悲に感謝しなさい」


 ニタっと黒く微笑むUV1。

 もちろん『カースを完全に消滅させなかった理由』は慈悲によるものじゃない。

 カースがいなくなると、今後のミッションに問題が生じるから。

 ゼノリカが利用しようとしている『ラムド』は、『カースあってこそ』だから。

 それだけ。

 だが、別に、全てを正直に伝える必要はない。

 今、この瞬間のUV1がこなしているミッションは、ゴートを黙らせること。

 ならば、ここは、サラっと『おためごかしておく』のがベスト。

 当然の趨勢(すうせい)。


 ――などと計算しているUV1の向こうで、ゴートは、


「ぁ……ぁ……なっ……なにが起き……」


 茫然としていた。

 理解が追いつかない。


「バカな……ありえない……カースソルジャーは、一体でも、世界最強の勇者と同等だぞ……間違いなく、戦闘においては世界最高峰の召喚獣なんだ……な、なのに……一瞬……こ、こんなこと……」


 スリーピース・カースソルジャーが瞬殺されて、心底から愕然としたその理由は至極単純。


 ラムド(本物)が、事前に、サードアイでUV1を見通したため、ラムド(38歳のセンエース)も『UV1が相当な強者だ』と理解していた。

 UV1は間違いなく、圧倒的な強者。

 今のゴートでは絶対に勝てない超人。

 だが、ゴートに『理解できた』のはそこまで。


 具体的に、UV1がどの程度の強者なのかを想像する事はできなかった。


 当然の話。

 この世界の存在値平均は15前後(時代によって12だったり、17だったり)。

 最高峰強者(表)の存在値でも100以下。

 それが、この世界の常識。

 10以下はゴミ。

 20以上なら、まあ優秀。

 30あれば、どの分野でも重宝される超一流の人材。

 50を超えていれば、異常な領域。

 70~80は、支配者級。

 90を超えれば突然変異。


 勇者は、90を超えている突然変異。

 この世界では最強の超人。


 その勇者に、タイマンでは負けたが、三体同時で相手すれば楽勝できる『スリーピース・カースソルジャー』の存在値は150前後(カースソルジャー1体の存在値は105)。


 この世界において、存在値という概念は100前後で頭打ちするもの。

 テストの点に置き換えれば分かりやすいかもしれない。

 平均15点しか取れない、クソ難しいテスト。

 そのテストで満点近くをとれる、飛び抜けた天才の勇者。

 間違いなく天才の魔王やラムド。

 凄まじい天才の勇者をも超えている超天才のカースソルジャー。



 それが、ゴートの視点。

 この世界における常識。

 理解できる認知の範囲。



 それと比べて、ゼノリカはどうか。

 UV1の力はどうか。



 ゼノリカの天下、百済(くだら)の頭目。

 まだ神族ではないが、神の候補者にまで上り詰めたUV1の存在値は、






 『377』。






 かつ、戦闘力も、現世水準だと『異常なほど高い』という評価になる。

 つまり、信じられないくらい強い。

 あえていうならば、

 神のように強い。


 その異常な強さは、ゴート(ラムドにとっても、38歳のセンエースにとっても)に想像できる範囲を遥かに超えていた。


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