ザコが。ゼノリカをナメんなよ

ザコが。ゼノリカをナメんなよ





 ゼノリカの天下。

 神族からすればパシリグループだが、その実は、超最上級世界の上位世界全ての中でも飛びぬけて強い『果ての果てにいる存在たち』が集まっている最高位組織。

 その頂点に立つ者の力。

 強者と出会う機会がほとんどない『第一アルファ』や『エックス級』の世界で、『ゼノリカの天下』という、その異常な領域を想像する事などできる訳がない。


 簡単に言えば、ゴートは、UV1の戦力を、『カースソルジャーを使えば、勝つことは難しくとも、抗(あらが)うぐらいは出来るだろう』と判断していた。

 もっと言えば、

 ゼノリカの天上・九華十傑の第六席、神族が一人『ブナッティ・バロール』が相手でも、カースソルジャーが使える今の自分ならば、『闘って負ける』くらいは出来るだろうと思っていた。

 ハッキリと言えば、

 ゴートはゼノリカを完全にナメていた。






 ――カースソルジャーを使っても勝てないほどの強者――

 そこが、ゴート(ラムド)の認知上における『戦闘能力』の限界。






 ゆえに、『カースソルジャーすらも瞬殺できるほどの力』は想像する事ができなかった。

 ゴートは、最初から、UV1に『勝てない』と理解していた。

 しかし、流石に、『闘って負ける』と想像していた。

 抗って、戦闘を経た果てに、『ハッキリと負ける』と思っていた。

 だが、現実は、『闘い』になどならなかった。

 サクっと、踏みつぶされた。

 アリのように踏まれて終わった。

 それだけの差があった。

 ここまでの差があるとは、流石に予測できなかった。

 カースソルジャーを使っても負ける――『それ』だって、ラムドの常識からすれば異常だった。

 カースソルジャーはとてつもなく強い。

 絶対的な強さを誇っていると言っても過言ではない。

 なのに、瞬殺……

 ――それが、今、ゴートを唖然とさせている理由。

 単純。







 『いったい何が起こったのか』と目を丸くしているゴートに、

 UV1は言う。


「ただの次元跳弾よ。空間を超えて弾丸をブチ込んだだけ。私は、どこにいても、ゼロ距離で、『敵』に機関銃の弾丸を叩きこめる」


 しごく簡単な解説。

 実は、複雑な技術のオンパレードだが、それを一々解説したりはしない。

 当然の話。


 それを説明しなければいけない相手ではないし、

 なによりも、現在のゴートはUV1の『敵』。


 手を噛んできた狼。

 カースソルジャーの力は、犬とは呼べない強大さを誇る。


 理由や事情や経緯はどうであれ、ゴートは、UV1に対してカースソルジャーを使用した。


 明確な敵対行為。

 ゴート・ラムド・セノワールは、UV1に、銃をつきつけてきた相手。


「もちろん、それはただの表層……本当の切り札は、その先にある。それがどんなものか、もちろん教えない。けれど、表層を聞くだけでも、私とお前の差は分かったでしょう」



 UV1が、ここまでの領域に辿りつけた理由は一つ。

 それだけの地獄を積んだから。


 UV1は、力を与えられた者ではない。

 神様からチートを与えられた反則者ではない。

 確かに才能は持って生まれた。

 途方もない才能。

 ケタ違いの資質。

 しかし、その才能を、ここまでの輝きに磨きあげてきたのはUV1自身。


 UV1は努力を積んできた。

 ゼノリカに属する者なら誰だってそう。

 皆がみな、研鑽を積んできた眩い結晶。

 それは、本物の、全てを包み込む光。

 決して茶番ではない真に尊い輝き。

 だからこそ美しい。


 UV1は、その中で抜きんでて、ついには、神族となる一歩手前まできた超人。

 それだけの時間を、努力を、地獄を積んできた結晶。

 ゼノリカという、途方もなく厳しい競争社会で、気高く孤高を目指して邁進してきた。

 一歩ずつ、着実に、階段を上がってきた。


 UV1にとって、『ゼノリカの天下・百済の頭目』という『ココ』は、必死にもがき、どうにか辿り着いた場所。

 全てを賭して、血反吐を撒き散らしながら、どうにかこうにか到達した領域。


 それなのに、

 限定的とはいえ、『エックスの異端(ラムド)』ごときと同等?



 ――ふざけるな。



「お前ごときが、私にナメた口をきくな」



この光景は、奇(く)しくも、あるいは皮肉にも、究極完全体アダムをボコったセンエースの姿と酷似していた。

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