『無限転生』

『無限転生』




「し……信じられねぇ……」


 『セン』が、


「ウソだろ……マジではじけ飛んだ……」


 呟く。


 理解が認識と並走する。


 『ソレ』は、確かにはじけ飛んでいた。




 センは、何度も何度も、自分の中にアクセスして確かめる。




 間違いない。

 完全に――破壊されている。






「俺の呪い……何をしても抗えなかった『無限転生』の呪いが……あとかたもなく破壊されている……」







 はじけ飛んだのは、『センを構成している全て』の『中核』だった『無限転生』。


 何をしても消えてくれなかった、地獄の呪い。






「やっ……た…………消え、た……やった……」






 ぷるぷると喜悦に震えているセンを、呆けた顔で見つめていたサイケルが、


「な、なぜ、吹っ飛ばない! はぁ?! 解析、できたはずだ! 分解できるはずなのににぃい! なんでぇ!!」


「出来ているさ。誇っていい。俺は、はじめてお前を尊敬した。すげぇよ、サイ……お前の、その力は、いったい何なんだ……ぃや、いいや……詳細とか、どうだって」


 センは、グっと歯をかみしめて言う。


「終われる……わかる……俺は、今、ただの神になった……『完全なる消滅』さえ果たせれば……キッチリと終わる事ができる……ただの優しい『独りぼっち』…………静かで、豊かな、本当の……あぁ……」


 そんな喜びに打ち震えているセンに、



 ――サイケルは、両手を向けて、






「シネよ、……死ね……死ね……死ね……しね、SINE、壊れろ、どうして破裂しない!!」






 何度となく、あらゆる角度から、『センの破壊』を試してみた。


 センをこっぱみじんにしようと必死にあがく。


 しかし、



「なんで……できない……意味がわからない……解析できているのにぃいいいい!!」





 と、そこで、センは、


「おっと、そうだったな……まだ、途中だった」


 ハっと顔をあげて、


「かみしめるのは後だ。まずは、アダムを取り返してから……俺のフィナーレは、そのあとで、ゆっくりと考える」


 バクバクしている心臓を整えて、


「サイ、良かったな。お前にとって、最高の舞台が整ったぞ。俺の神生唯一にして、最大にして、最後の――『絶対に負けられない闘い』。その敵がお前だ。ははっ、なんということでしょう。劇的にもほどがある」


 センは軽口を並べながら、トントンと短くジャンプをして、


「さあ、やろう。ラスボス役が『大根役者のデビュー前』という、ちょいと残念なキャスティングだが、まあ、贅沢は言わねぇさ」



 センが喋っている間、サイケルは必死に考えていた。

 『終わりたくない』という、祈りにも近い懇願と、

 このままでは本当に『何もできずに終わってしまう』という焦りが錯綜。


(いやだ、いやだ、いやだぁああ! このまま終わりたくない……せめて、一矢……なにか、ないか……なんでもいい……なにか……もはや、こうなったら、かすり傷でもなんでもいい。とにかく……何かぁあ……)


 解析できたなら、殺せないにしても、何か出来る事があるのではないか。

 自分の力が完全に通用しない訳ではい。


 ――ならば、なにか、あるはず――


 必死にあがき、悩み、もがいた結果――

 サイケルの思考は、




 届いた。








(そうだ! ヤツの無限転生……それを奪い取れば……)



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