-126500話   『コンピュータの時代に突入』

-126500話   『コンピュータの時代に突入』



 気づくと、

 『彼』が『無』の底で目覚めてから、



 155億年が経過していた。



 倍速していない時間――『彼』が実際に体感した『実時間』は、ほんの数千年ぽっちだが、

 この世界の年齢は、すでに、百億歳以上。




 進化指定アプリを筆頭に、無数の補助アプリを駆使して、

 細かい調整を繰り返してきた結果、



 『彼』が目をつけた『とある惑星』には、高度な知性を持つ生命体が誕生していた。




「人間は作れた……うん、問題はここからだな」




 原始人が誕生したのは、ほんの数千年前。



 しかし、ことあるごとに、『彼』が手を貸してきたので、

 すでに、人類は、非常に高度な文明を築き始めていた。



 『彼』は人類に、数多の『天啓』を与えた。



 論理が規則に従うという、高次のゲーム性に気づかせ、

 火薬や羅針盤などの、文明の加速度的発展に不可欠な下地を発見させ、


 電球、電気機械式リレー、トランジスタなどを開発させ、




 その小型化を促した。








 ――そして、世界は、コンピュータの時代に突入した。






 それと同時に、幾人かの天才が、この世界のコードを見つけ始める。






 形質人類学者、遺伝学者、考古学者が、神のパズルを次第に解きあかしていく。

 この世界は、いつしか、『彼』が生きていた西暦2000年代の日本よりも発展していた。



 ――ここから先は、『彼』も知らない世界。


 想像ができない領域。



「よっしゃ。人類が、ついに、俺の知っている世界を超えてきた。さあ、お前ら、どこまで進化する? 俺の想像力が及ばない超知性にたどりつけるか? いつか、『俺という個が、なぜ、ここで、こんなことをしているのか』――その謎すら解き明かせるほどの、究極進化を果たせるか? もし、究極進化にたどり着けたなら、その時は、俺に、俺がここにいる理由を教えてくれよ」




 ワクワクがとまらなかった。

 きっと、世界は、進化し続ける。

 そして、いつか、答えにたどりつく。



 そう信じていたから。







 ――しかし、ここで、世界はまったく予期していなかった停滞を見せはじめる――






 進化指定アプリは、どのように進化するかを指定することはできても、

 『どのように進化するかを【決定】すること』はできない。


 言うならば、それは子育てに似ている。

 『こうなってほしい』という強い想いを持ち、


 金と時間をつぎ込み、あらゆる手を尽くして育てようが、

 だからといって、



 子が親の望み通りの未来にたどりついてくれるわけではない。






 『彼』が生み出した人類は、科学技術の発達、世界的な人口の爆発的増加、

 新エネルギーの開発・発展と、『彼』が望むとおりの成長を遂げたのだが、












「また核戦争……これで、二十七回目の人類滅亡………………どうして……」






 ここにきて、


 世界は、大きく停滞する。





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