存在値1200のバケモノが隠れていました
存在値1200のバケモノが隠れていました
六代目魔王リーンは、魔法が使えない。
使えないというより、
『魔法を使わない』というルールを自分に課すことで、剣の腕を上昇させた。
それは、『アリア・ギアス』という、この世界のシステムの一部で、
『~~をしない』
かわりに
『~~ができるようになる』
というもの。
(まあ、それも異世界システムあるあるだな。異世界あるあるっつぅか、異能あるあるか? まあ、なんでもいいけど)
王の間に向かう途中、ラムドに化けているセンは、
ラムドの脳から、この世界の情報を回収していた。
(この世界の基本システムは……アリア・ギアスに、一般的なランク魔法……後は、グリムアーツか……)
グリムアーツは、自分でカスタムできる肉体系スキル。
相応の努力をすれば、ただのパンチで海を割ったりできるようになる。
ようはオリジナル必殺技。
(中級世界(エックス)のテンプレだねぇ……ご多分に漏れず、使用できる魔法の最高ランクは9。それ以上は『神の領域』でひとくくりか……はっ。おおざっぱだねぇ)
王の間につくと、すでに、勇者と魔王は死闘を繰り広げていた。
側近や下僕の高位モンスターたちは、二人から離れた場所から魔王を応援している。
どうやら、魔王から一騎討ちを申し出たらしく、手出しは禁じられているらしい。
数多の魔法を使いこなす勇者と、剣一本で対応している魔王。
「話には聞いていたが、マジで剣しか使わねぇのか、だっせぇ! つぅか、その見た目、どうにかなんないもんかねぇ! これじゃあ、まるで、お遊戯に付き合ってるみてぇじゃねぇか」
魔王リーンは、見た目だけなら、先ほど、センが助けた子供よりも幼く見える。
八歳前後の美少女で、長い金髪が特徴的。
「くっ……まさか、ワシの剣がここまで通用せんとは……勇者、聞きしに勝る強さ。中身が腐ってさえいなければ、最高の友となれたものを、惜しい」
「くせぇモンスターのダチとか、死ぬよりキツイ罰ゲームだっつぅの! ナメたゲロを散らしてねぇで、とっとと死ねや」
「……本当に酷いな、この勇者」
リーンは心の底からしんどそうに顔を歪ませながら、
身の丈の倍はある大きな剣を振り続ける。
そんな彼女の闘い様を見ていたセンは、
(はいはい、幼女魔王ね。テンプレ、テンプレっと)
アクビをしながら心の中でそう呟きつつ、周囲を見渡す。
(配下の連中は……側近連中が、端から、存在値50、57、61、55、70、72と。で、周囲を囲んでいる大量の下僕モンスターは、種類こそ多いが、十把一絡げ……まあ、エックスの魔王軍戦力なんざこんなもんだろうな……ん?)
そこで、センは、大量に並んでいる魔物の群れの中に一つ、
妙な輝きを放っている魔物がいるのに気付く。
ライトメイルを纏い、フルーレを腰に携えた、小柄で細身の、女性龍人。
しっぽも翼もウロコもなく、見た目、ほぼ人間だが、
左右の額角髪際(こめかみの上くらい)から龍特有のツノが生えている、糸のように目が細い龍人。
(なかなか練度の高いフェイクオーラだ。一瞬、気付かなかったぜ。この俺のプロパティアイを、一瞬とはいえ欺くとはアッパレ。どれどれ……存在値…………は? せ、1200ぅ? ……おいおい、なんだ、あいつ。1200って、超最上級世界(アルファ)でも御目にかかれない究極を超えた域だぞ。こんなエックスに居ていい存在じゃねぇ!!)
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