世界最強。
世界最強。
超魔王ゾメガの敗北。
――その信じられない光景を見て、
ゾメガの配下であるパメラノが、
「し、信じられん……ゾメガ様が……負けた……あ、ありえん……こんな……こんな……」
ガクリと糸が切れたように、膝から崩れ落ちて、膝の皿が割れた。
しかし、そんなことも気にならないくらい愕然としていた。
ゾメガが負けるなど、彼女の常識ではありえないこと。
ゾメガがこそが最強。
絶対最強。
超える者など存在してはいけない、
世界の真理。
「……いったい……ぬしは……」
問われて、
センは、ニっとわらい、
堂々と言う。
「センエース……探偵さ」
「……は?」
「気にするな……ただのテンプレだよ」
こうして、センは名実ともに、世界最強の存在となった。
しかし、それでも、まだ、センはスタートラインにもたっていない。
★
――サブタイトル『究極の邪神』――
最強になっても、センの旅は終わらなかった。
次の世界でも、大きな面倒ごとが起きた。
召喚術を極めようとしていたセンが、うっかりで召喚してしまった、
『究極の邪神ミシャンド/ラ』
「……なぜ、私を召喚した……どういうつもりだ、貴様……」
「なぜって……偶然としか言いようがないんだが」
「ふざけるな。私を『拘束状態』で召喚するとなれば、強大な魔力が必要となる。一個人では賄いきれない莫大な量が……」
「莫大な量……まあ、確かに、結構な量を使ったな。具体的にいうと、このくらい」
そこで、力の片鱗を見せつけたセン。
その強大さを目の当たりにしたミシャは、
「……ば、バケモノ……」
自分より強い生命などいるはずがないと思っていたが、
しかし、目の前にいる男は、自分を超えていた。
その事実に、最初は驚いたが、
「……なんという幸運……」
すぐに、その驚きは歓喜に変わった。
「貴様に頼みがある。私を……」
そこで、ミシャは、己を縛っている拘束を解き放ちながら、
「殺してくれ」
彼女の想いは純粋だった。
センに召喚される前、彼女は、自分の世界を滅ぼしている。
彼女は、あまりにも格が違う『邪悪さ』を内包するがゆえに、
存在するだけで、意思とは関係なしに、周囲の命を奪ってしまう。
それはほとんど呪いだった。
彼女は、その呪いにもがき苦しんできた。
なぜだか、自殺することもできず、
己の邪悪なオーラを制御することもできず、
ただただ苦しみ続けてきた。
だからこそ、
ミシャは己の死を望んだ。
目の前の男なら自分を殺せるかもしれないと思った。
だから、頼んだ。
その想いを、
「まあ、そこまで言うなら殺してやるよ」
センは受け止めた。
「ありがとう」
穏やかな顔をして笑う彼女に、
センは拳をつきつけた。
暖かい光を放つ拳。
その拳は、
決して、ミシャを傷つけるものではなくて、
むしろ、
「ぐぅああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
センがミシャを殴ると、
ミシャの黒いオーラがセンにからみついた。
ミシャの意思ではない。
そんなカウンター技ではない。
「き、貴様! 何をしている!!」
驚き、あわてふためくミシャ。
センは、超神水を飲んだカ〇ロットのようにのたうちまわりながら、
「……殺してやるよ……お前の絶望……」
かすれた声で、
目から黒い血の涙を流しながら、
「伝わってくる……お前の痛み……苦しみ……ぐぅ……ぬぅ……」
吐血する。
全身をかきむしり、
激痛と絶望のそこで、
それでも、センは、
暖かな目で、ミシャを見つめ、
「つらかったよな……くるしかったよな……」
黒い涙があふれて、
己が吐いた血に溺れながら、
「……もう、大丈夫だ……俺が背負ってやる……」
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