人を好きになれない理由は、あれのせい。

迦楼羅

第1話 ストレスのせい。

──人を好きになることが難しいことを知っているだろうか。


人は誰もが『ストレス』を持っている。

俺、小野宮おのみや 陽町ひたきは、その『ストレス』が見える。

そう、のだ。

その人の体にまとわりつくように黒い文字のモヤが見える。

俺はそれのせいで、


──人を好きになったことがない。



「おはよ~、陽町。また1人?」

このおっとりしたやつは、洲山すやま 夢斗むと

俺の唯一の男友達だ。

「当たり前だろ!それより夢斗、今日はえらく酷いが昨日は何時に寝たんだ?」

寝癖が酷かったのでそう聞く。

(まぁ、いつもの事なのだが)

「んー、昨日は6時に寝たよ」

「そうか、おやすみ」

「うん、おやすみ」

こいつは学校来てもすぐ寝る。

日常茶飯事の会話をして夢斗は自分の席へ歩いた。


洲山夢斗のストレスは、



『睡眠時間』



のみだ。

夢斗と会った時はストレスが1つしかないことと、睡眠時間だということに驚いた。

こんなやつは珍しい。というか、見たことがない。

夢斗気軽に話せる。


俺の唯一の男友達があいつだけなことがそろそろ分かっただろうか。


その人のストレスは全てを物語る。

俺はそのストレスのせいで人が信用出来ない。

もちろん、恋もしたことがない。

全て、見えてしまうからな!haha!

彼女が欲しくないわけではない、信用出来る女がいないのだ!haha!

ふー、悲しくなるね!



──なんだかんだで、授業が終わる。


「おい、夢斗!起きろ朝だぞ」

外はオレンジ色の夕日が輝いている。

「んーーー、おはよー」

夢斗は起きる時間が変わるため朝は別々だが、帰りは一緒だ。

前から思ってるけど、夢斗、こんなに寝てるのに毎回ちゃんと学校に来るのなんなのだろうか。


健全のDK2人の帰宅が始まる。

DKって、ド○キーコングじゃねぇからな?

男子高校生だからな!

JKは、よく聞くけどDKは聞かないよな。

男女差別反対。

まぁ、そんな意味不明な考えは置いといて。


「陽町、よろしく」


俺は周りを見渡す。

「んー、そうだなぁ。『パワハラ上司』『夜勤めんどい』『奥さんの機嫌取り』『給料低すぎ』『酒飲みたい』とかだな」

毎度の恒例行事。


人のストレスで職業あてましょう!


プライバシーなんて関係ねぇ!

あ、ちなみに、夢斗にはストレス見えること言っている。

人のストレスを見て時間をつぶす。われながら最低なことをするなぁ。

「一般的なサラリーマンって感じだね」

夢斗がそう言う。

「正解。最近のサラリーマンはこんなのが多いからなぁ」

「そうだね、寝る仕事ないかなぁ」

「馬鹿か」



「──ん?」

「どうしたの陽町?」

「な.....なんだありゃ.....」

「ん?え?」

夢斗が動揺している。それ以上に俺が動揺しているのだが.....。

原因はあいつだ。

あの、1人の“少女”だ。

「あの、女の子がどうかしたの?」

俺があまりにも見ていたため、夢斗が問う。

「まさか──惚れた?」

「いやっ.....!ちょっ.....ちょっと.....待っててくれ!」

俺はその少女の所へ走る。


この少女には、今まで見たことないような『ストレス』があった。それは今まで見た中のストレスより遥かに大きすぎた。文字も大きいが数も多い。

初めて見るストレスに思わず体が動き、触れてしまう。

「あっ.....あの!!」


肩に手を置かれた少女は振り返る。



──その目には我慢している大量の涙が見えた。

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