第4話 特別なメール
『今日のクラス対抗リレーお疲れ様~
佐藤くんって以外と足が早かったんだね!!
私、ビックリしちゃった~
これは体育祭での活躍も期待出来そうだね?
今から楽しみだな~!!
それで明日の数学なんだけど、教科書63ページの問2を授業の始めに答え合わせするらしいから解いて来るようにだってー。
ところで佐藤くんって揚げ物、例えば唐揚げとかって好き?』
もはや日常の一部と化してきた、家に帰ってくると藤澤から届くメール。内容自体は今までとほぼ変わらないものだ……。
だけど、今回のそれには読んだ瞬間に俺を引きつけてやまない単語があった。
「唐揚げ……」
そうつぶやいた瞬間、パッと思い出した。
もう随分と思い出さなくなって久しい母との記憶だ……。
そうだ母の生前、俺は母の作った唐揚げが好きでよくねだっていたな……。
そして母が亡くなってしまって、それでも俺はまた同じ味の唐揚げが食べたくて、市販品を片っ端から試したけど全然ダメで……最終的に自分で作って当然失敗して……。
ああ、あれから一度も唐揚げなんて食べてないな。
思えばすっかり忘れてた……。
あの唐揚げなら好きだ…………好きだった。
……きっと二度と食べられないだろうけど。
とりあえず、藤澤のメールに返事をしなくちゃな。
『体育祭はあまり出たくない。
ありがとう。
唐揚げは普通。』
亡くなった母の唐揚げが好きだなんて書けるわけなくて、俺はそのように返信した。
そしてやや時間を置いて自分の送信したメールを後から見返して思った。
やっぱりあのメールへの返信が3行っておかしかったかも知れない……。
でも今はそう思っていても、あとあと絶対直せないんだよな……。
―――――――――――――――――――――――――――……
それから数日後、藤澤からこんなメールが届いた。
いつもに連絡メールのあとに、こんな内容の別のメールもう一通。
『いつも私のメールや雑談に付き合ってくれてありがとう!!
次の日曜って空いてる?
もし空いてたら私から御礼に食事をご馳走したいんだけど……どうかな?』
なんだコレは?
御礼に食事って……。
どちらかって言えば、世話になってるのって俺の方じゃないのか?
しかし、そうだな……次の週末なら空いているし、世話になっている相手が誘ってくれたのだか行った方がいいだろう……。
難点は食事って部分と、向こうがご馳走したがってることだが……。
とりあえず量の少ないメニューを選ぶのと、その場で上手く説得して支払いは俺が持とう……。
説得、出来るのか俺……?
……………………。
まぁ……行くことは決めたのだから了解の返事を送って置こう。
『コチラこそありがとう。
空いてる。
分かった、付き合う。』
俺がそう返信してから、まだそんなに経たない内にまたメールが届いた。
『ありがとう!!
とっても嬉しいよ!!
実はもう場所は決めてあって、当日の12時にこの店の前で待ち合わせでよろしく!!
最後に地図のURLも添付しておくねー』
親切に向こうが全部決めてくれたな……。
コチラとしては助かるのだが、そこはかとなく強引さを感じるのは気のせいだろうか……。
とりあえず、こちらにも返信しておこう。
『ありがとう
了解。』
かくして次の週末に藤澤と食事することが決まったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます