母さんが悪いんだよ。(仮)

れいん

第1話

「…ばいばい、母さん。」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


2人の歩く姿は至って普通な高校生だった。


だが、その家庭は全く普通ではない異常な家庭である。

実の母親から虐待されている大橋和也、

母の再婚相手から虐待されていたが我慢が出来なくなり一度殴りかかってしまい、母親からもその再婚相手からも怯えられる岩野諒太。


2人は小さい頃に虐待から逃げるように公園で時間を潰している時に出会う。

一緒に遊び、話し、互いには互いしか居ないのだと幼ながらに理解し支え合った。

そして1年が経つ頃には2人の絆は何よりも強く深く結ばれていた。




和也の17度目の誕生日、2人は学校から帰った後出かける事を約束していた。

普段は諒太が和也を家まで送り届けるのだが、今日は早く帰って出かけたいと和也が言うため途中で2人は別れて帰った。


和也は家に帰り、自室がある2階へと早足で向かう。自室に入り、荷物を置いて制服から私服へ着替えていると1階に居る母親が叫んでいた。


「降りてきなさい和也!」


今朝学校へ行く時、母親の機嫌は良かった。

何かあったのだろうかと和也は考えつつ前日に用意しておいた荷物を持って1階に降りた。

玄関に荷物を置いて母親の居るであろうリビングへ行き、声をかける。


「どうしたの母さん、僕何かした?」


和也は常に母親の機嫌を取って生きてきた為、母親の機嫌が悪いと思うとすぐに自分が何かしたのか聞く癖がついていた。

ほとんどの場合は和也は悪くないのだが、それでも母親は和也を殴ったし和也はそれを我慢していた。


今日も例に漏れず母親は和也を殴る。痛みは慣れているのもあり、我慢できていたのだがふと時計を見ると殴られ始めて10分が経過していた。このまま殴られていると腫れている場所を冷やす事も出来ずに諒太が迎えに来る時間になってしまう。そうすると必ず諒太は心配して今日出かける事を中止するだろう。

そう思った和也は、生まれて初めて母親を突き飛ばして反抗した。


「もうやめてよ、僕何も悪くないじゃん!

殴んないでよ!!」


「うるさい!!!あんたは大人しく殴られて

いればいいのよ!!」


なんで。なんで?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんデナんデナんでナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ。




なんで、ぼくが?




和也の中で何かが切れた瞬間だった。


和也は起き上がった母親をもう一度突き飛ばしてキッチンへと向かった。

キッチンから包丁を持ち出し、リビングへと戻る。


ゆっくりと母親の元へと向かうと、母親が助けを求めてきた。


「和也、やめて和也、ごめんね…いつも殴っ

ちゃってごめん、だから、こ、ころさない

で…お願い和也、いや……いやよ……死に

たくない、ころさないで…和也、おねがい

よ、やめて……」


「母さん、ぼくは何回やめてって…痛いっ

て言った?母さんは全然やめてくれなか

ったよね…?」


「う……こ、これからはしないから…お願い

…お願いよ和也……ごめん…やめて…っ」




「…ばいばい、母さん。」





グサッ

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母さんが悪いんだよ。(仮) れいん @REINREITO

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