同時変身
戻ってくる兵士、冒険者などの戦闘員とは逆方向に歩く。ゆっくり歩き、やがて人数も揃う。
前方にはフォボス、ナイアド、ヒューレを中心に、三名の実力者が並んでいる。全員戦闘能力も申し分ないため、安心して任せられる。
「よおナイアド。お前仲間連れていけないけど大丈夫か?」
ナイアドは弱体化した俺に負けている。実力は本物ではあるが、フォボスやヒューレのような飛び抜けた強さは持っていないような気がする。
ナイアドの仲間は皆実力があり、連携も取れているのでナイアドが本気を出せるのは仲間がいる時だと思うのだが。
「もちろん。私一人でも戦えます。あの時は本気を出せませんでしたから」
「そか。期待してる」
杞憂だったか。確かにあの時は下調べのつもりで勝負を仕掛けてきたんだよな。
先程までゴーレム一体の相手を担当していたし、俺が知らないだけで強力な大技は持っているらしい。
フォボスが教えてくれなかったのは、ムカつくからとかそういう理由だろうな。
「勇者様、頭を撫でてはくれないか」
ナイアドが去ると、次にヒューレがやってきた。こいつはこいつで化け物だからな。ほんと、最初に会った時のあの少女とは思えない。
というか、なんて要求をしているんだ。隣にいるフォトがニコニコしてるけどなんか怖いんだけど。
あとフレンの目が光ってる。何この子たち、怖いわ。
「はいはい。頑張ってな、死ぬなよ?」
「当然。あ、終わったらまた遊んでくれるかね」
また、というのは普段から遊んでいるからである。
遊ぶ、とは本当にその通りで、かくれんぼをしたり狩りをしたりして遊ぶのだ。工作とかもしたな。
「終わったら……ああ、落ち着いたら遊ぼう」
この戦いが終わっても、俺にはやることがある。なので、終わってからすぐには遊ぶことはできないだろう。
だがまあ、そのやることもなるべく早く終わらせたいな。行ける場所も増えるし。
「ンじゃ、行ってくるわ」
「おう」
特に言葉は交わさなかった。お互いに目を見て、小さく頷く。
すると、三人が並び、魔力を集め始めた。ここで長時間発動させる技をあらかじめ発動させておくのだ。
「来なさい、『
「『ソウルアーマメント』ッ! ヘルハウンドッ!」
「『王獣化』」
ナイアドの身体の周りに群青色の水が漂う。纏っている魔力も異常に増えていた。
フォボスの『ソウルアーマメント』のヘルハウンドは数回の魔界遠征にて入手した魂だ。黒い炎を扱う死の猟犬。
ヒューレの身体にはうっすらと緑色の風が見える。あれが身体能力や技を格段に上げてくれているのだろう。少し離れた場所にいる俺が魔力による風を感じるのだ。
いずれもエクストラスキルだろう。その発動と同時に、サポート班はゴーレムの足元に向かった。
入れ替わるように多くのウルシュフスが飛び込んでくるが、正面から当たる相手だけ斬る。残りは外壁付近に残った人たちが処理してくれるだろう。
「俺たちも行くぞ」
全員、準備はできているようだった。
なら、さっさと行ってしまおう。今魔王候補が攻撃を仕掛けてきたらたまったものではない。
同じように魔力を溜め、スキルを発動させる。身体の周りに四色の光が現れる。
「行くぞ、皆。『
「『
「『ドラゴンアームズ』武装ッ!!!」
「『顕現修羅』!」
「『
俺は『
フォトの『
リュートの『ドラゴンアームズ』はインフェルノの鎧だ。いろんな種類の鎧を使えるし飛べるというめちゃくちゃに強い鎧だ。
ヴァリサさんの『顕現修羅』はほら、力こそパワーって感じだ。破壊力が異常になる。
フレンの『
……依然見たものよりも剣の光が弱く見えるな。やはり、まだあのことを引きずっているのだろうか。
しかし、今この状況で説教をしても仕方がない。戦えるのだからいいさ、本当に戦えなくなったら元気づけよう。今は、フレンも悩んでいるのだ。戦闘中にその悩みが無くなることを祈って戦おう。
顔を上げると、ゴーレムの形がほとんど出来上がっていた。少なくとも、あと少しで動き始めることは予想できる。今のうちに近づいてキレーネとディオネを探そう。
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