川に写る鱗。鏡に映る君。
影神
風鳴
僕は小さい頃から人には見えないものが見えた。
初めてそれを見たのは古墳の上の空、
円を描くように龍がぐるぐると古墳の上を回る。
僕はそれを内緒にした。
何故なら龍が人間に捕まっちゃうと思ったから、
それから何年かして、
僕はそれ以来龍を見ることがなくなった。
いや、正確には見れなくなってしまったのだろう。
原因は僕が汚れてしまったからだ。
子供は純粋で目が綺麗だから全てのものが映るけれど、
大人になってしまうと、汚れてしまうから
くもって、見えるものも見えなくなってしまう。
そんなある時、気晴らしに散歩をしていると、
僕はある川の側を通った。
なんとなく気になって覗いてみると、
川は少し濁っているだけかのようにも見えたが、それは見えた。
初めは藻かとも思ったのだが、確かに鱗が動いていた。
僕が子供の時に見た龍とはまた違った種類だったが、
見れたことが僕にはとても嬉しかった。
これを言うと住み処が無くなってしまうので、
このことは勿論秘密にした。
しかし、今思えばバレてしまったらもうそこには
居られなくなり、僕が見てしまったから、
或は見付けてしまったから、彼等は
居なくなってしまったのかもしれないし、
そこに住めなくなくってしまったのかもしれない。
僕は無知にも彼らを追いやってしまった。
僕らもその内、どんどん住み処を追いやられて、
いなくなってしてしまうだろう。
妖精や、喋る動物等もそうやって消えていってしまった。
僕も誰かに見付かってしまったら、消えてしまうのだろうか。
僕が消えたら何処へ行くのだろうか、
僕には行く宛などはあるのだろうか。
ふと考える。
次に消えてしまうのはなんだろう、
もしかしたら僕か、或はあなたかもしれない。
だから見付からないように気を付けてね、
ほら、あなたも今。
誰かに見られてるかもしれないから、
川に写る鱗。鏡に映る君。 影神 @kagegami
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