きみの嘘、僕の恋心
新吉
第1話きみの側、僕の居心地
「僕、ここに来てもだいじょうぶ?」
俺はいいよと言う。ここは学校の教室でこいつはいつもは後ろの席に座っている。隣の席の奴らが食堂に行ったのを見て、お弁当を持って隣に座りに来た。長めの前髪の隙間から俺を見る。
「いつもいいよっていうきみがすきだよ」
お前の側は居心地が悪い。胸が痛い。
俺はメガネがずれたのを直して、そっぽを向く。遠くの女子がくすくす笑っているのが見えたし、聞こえる。『お似合いカップル』俺らはそう呼ばれている。
「ずっときみの側にいれたらな」
お前は変わってる。女だけど自分のことを僕と呼ぶし、俺以上の甘党だし、美人なのに前髪切らないし、不思議なものが好きだし、俺のことをすきだという。
「きみは僕のこと嫌い?」
「嫌いじゃない」
そう口にするのがせいいっぱいだ。
そんな俺を見て嬉しそうに笑う。そんなお前が好きだ。
だけどお前が言うようにずっと側にいるなんてことはできない。今は俺をすきだというが、きっといつか嫌いになる。いや明日にでも嫌いになる。
お弁当を食べながらいつも俺に確認する。俺を信じていないんだろう。あたりまえだ、俺が俺を信じられない。俺はひとを信じることができない。優しくされても、怒られても恨まれても、泣かれても叫ばれても変わらない。さぞかし俺の側は居心地が悪いだろうと思う。
「僕の側の居心地はどう?」
前髪からのぞく微笑み。こんなぼくに向けられているのがやっぱり信じられない。
「最悪だよ」
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