第2話 チャールズの弟子
チャールズ・フォードが総裁を務める協会は『外側の神々の秘匿』を目的にした団体であり、チャールズが入会する前から存在していた。
協会は時代ごとに変質していた。
組織内の派閥闘争や時の権力からの弾圧の歴史の中で、分裂や吸収、消滅や再建を繰り返しており、組織の目的や構成も創設当時のものは失われ今や知る術はない。
チャールズは入会後直ちに旧首脳部を一掃して独裁制に移行した、それから約200年はチャールズ体制下で協会は安定している。
つまりこの老人は200年以上生きていることになる。
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チャールズの知る限り、人類にとって脅威でしかない邪悪な外側の神性の影響に最も適応した人間は山村年男であったと話す。
チャールズは年男がいない場所では、彼を適応者と呼んでいたし、その渾名は協会内でも共有されていた。
山村年男は幼少の頃から『外なる神の一柱、ナイアーラトテップ』と常に会話できたそうだ。
そして、その声を神託と信じ従い生きてきた。
このような形で外側の神に選ばれた人間は稀だ。
ナイアーラトテップは他の外側の神々より、人類との接触頻度が比較的高い。
それでもチャールズという稀代の魔術師でさえ、今までに4回しか拝謁できていない。
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チャールズが年男と初めて会ったのは、年男が日本の大学を卒業した翌年、1979年の5月だった。
年男はナイアーラトテップの声に導かれ、チャールズの邸宅を訪ねて来た。
チャールズの方でも予知夢で、日本から神の使者が来訪するのを知っていたのだが。
それから3年、チャールズは年男に魔術を伝授した。
その後、年男は母国へと帰国する。
帰国の際も年男は神の声に従い、チャールズの娘アリスを連れて行く。チャールズには何人かの養子がいたが、1人として実子はいなかった。
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年男とアリスは帰国後も神の御心に沿い、崎原という地方の小都市に居を構える。
神託が示す来たるべき時、この地で2人は子を成す結びつきの儀式を行う。
こうして産まれた子は『適合者としてショゴスを呼び出す触媒となる』というのが、ナイアーラトテップの御告げだった。
チャールズから魔術の教えを請うようにナイアーラトテップが年男に命じたのは『魔術によってショゴスを支配する』使命のためだと年男は信じていた。
ショゴスとは、様々な形態をとって外側の世界から地球に召喚される怪物のことだ。
外側の神々に比べれば矮小な存在だが、地球で人間が支配できる『彼方のものに奉仕する種族』の中では、最も恐ろしい存在だ。
何故なら、ショゴスは特徴や形状は違えど共通して、物理的な破壊や殺傷ができないのだ。
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