3−3「事前準備」
「はあ?清掃指揮なんて一番厄介で面倒な仕事を私が引き受けるわけないでしょう。小菅くんがする仕事はコレ!」
そう言って主任が出してきたのは1枚のタブレットであり、画面には医療用とか武器関係とか12ほどのイラスト付きのアイコンが付いており、さらにタップすると薬の種類や名前を選択して個数まで入力できるようになっていた。
「私たちは補給担当。小菅くんは私が無線で聞いた注文の品をタップして。私も画面を一緒に見ているから、しばらくのあいだは、間違いが無いはずよ。」
操作を覚えるためにしばらくタブレットをいじっていた僕はふと疑問を感じ主任の顔を見た。すると主任も嬉しそうな顔をする。
「あ、気づいた?そうなのよ。後ろのトラックに物資は積み込んでいるけど、別に私たちがあのビルの中に入る必要は無いの。このタブレットには移送用のシステムが導入されていてね、タッチするだけであのビルまで物資がどんどん配給されていくようになっているのよ。」
…どのような仕組みかはわからねど、どうもそうなっているらしい。
でも、だったら別に本社の倉庫から直接物資を移送しても良いのでは?
すると、主任が含みありげにビルを見る。
「いや、ここは地場がアレだからね。サーバーをいじくっている最中にシステムを伝って本社に影響が出たら大惨事になるから、システムは仮のサーバーに移すようにして物資はトラックに据え置きにしているの。で、今日が終わる頃にはそのタブレットも粗大ゴミになると思ってくれていいわ。」
(…マジかよ)見れば、防護服を身につけた人たちが、さらに持参してきたであろう警棒や猟銃などを装備し、意を決した表情でビルの中へと列になって進んで行く。中にはジェームズの姿もあり彼は開発部長の後ろで、なぜ持参したのかわからないようなデカいロザリオを持って歩みを進めていた。
「データ内にあるバグの中には悪質なものもあるからね。ああやって管理部の人たちから犠牲が出ないようにエージェントや撤去班が周囲を固めた総力戦になるのよ。ま、内部に入ったら本番ね。こっちに被害が及ばなければ御の字よ。」
主任の言葉が理解できない僕。
そんな様子の僕に何か気づいたらしく、主任はこう続けた。
「あ、もし社用を含めたスマホとかの電子機器を持ってるなら今すぐ車の中にあるハザードマークの付いた遮蔽用の箱の中に避難させておいて。サーバーをいじっているあいだは常に害にしかならないから。」
(ええ…)とりあえず言われてた通り、僕が車にスマホを置いて戻ってくると、直後、ビルの中から派手な爆発音がした。しかしながら爆風でビルの覆いがめくれる様子も火災が起きている感じもしない。
「始まったわね」とニヤリと笑う主任。
同時に救護班が担架を持って全速力でビルの方へと走っていき、こうして僕らの長い一日は幕を上げることとなった…
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