マリオネットバースデー
猫3☆works リスッポ
第1話月光
裂けたカーテンから差し込む月の光が、砕けて床に散らばった窓ガラスの破片に反射し金髪の少女の影を闇に散らす。
少女は音もなく部屋の中を移動すると、いくつもの影がその姿に付き従って揺らめいた。
部屋の中には僅かな物音もしなかった、移動する足音も敷き詰められた絨毯に吸い取られていたが、血液と糞尿の臭いは消えることなく部屋に満ちていた。
少女は左手に持った丸い皿に乗った物をその金色の瞳で無表情に眺めている、その皿に施された水鳥の蒔絵は赤く血塗られた。
「アト2分、お前の知っていることを話してもらう。」
絨毯に負けない音量で室内に甲高い合成音が響いた。
皿の上の生首には血が滴りそしていくつもの電極が刺さる、その電極は少女の右手首の中から出ているケーブルに繋がっていた。
既に命の絶えているはずの生首は機械的に口をパクパクさせて声にならない声をあげていたがきっちり2分でその口の動きを止めた。
館内には警報音が鳴り響き始めていたが部屋の中は静寂に包まれ水滴の落ちる音もしなかった。
その少女の腰まである長い金髪は返り血によって赤黒く染まり、纏った短めのスカートからも血が滴っていた。
そんな床の血溜まりにも足元に転がる死体にも何の興味も示さず窓に向かって歩き出した少女は外側からの力によって破壊された窓に向かって身を翻した。
国防省の機械警備システムが窓の異常を感知し警備員が駆け付けるまでのたった5分弱の間に何があったかはこの時誰も判らなかった、監視カメラには何も記録されていなかったのだから。
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