ネクタイ

霜月のよん

一階

第1話

一丁目35番地にあるアパートの一階に住む俺。


妻子、彼女なし。


気が付いたら、親元を離れて4年が経った。


定職に就かず、レストランのバイトと好きなことをしながら生きる。


ちなみに借金はしたことない。



俺は今日もふらふらと街をさまよいながら生きる。


歩く。自転車に乗る。右に曲がって大通りに出る。そのまま、ずっとまっすぐ。



この街には二階がない。


三階以上は存在する。


どう見ても二階の部分だけが空洞化している。


どのような構造をしているのか、わからない。


稀に、一階の上に誰かが座っている。


三階以上に行くには、元から三階以上にいる必要がある。


もしくは梯子を掛けてよじ登る。


エレベーターなんてものは無い。



一階地域に生まれた者は、三階の床を見ながら生きる。


太陽の光は、朝7時と正午と夕方5時にしか見えない。


気がつけばあっという間に日は落ちる。



短い時間の中、今日も気の向くままに自転車を漕ぐ。

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