少しだけ不思議

折り合いさん

第1話

その子



「ねぇ。」

その子は僕の目を見て囁いた。イヤホンを通り抜けて聞こえた声は優しくもグロテスクだった。

「君はなんでここにいるの?違うじゃん。意味がわからないよ。」

「別にいいじゃないか。」

「ふーん。おかしな人だね。」

心の言葉にできないのは小さい頃から今も続いている。

「君がいるから僕は言葉が出るんだ。」

「そういうところだよ。謎の言葉。わからないから、会話にならないの。」

「のぞいてくれよ。僕の内側を。」

その人は髪の毛のピン留めを外して、僕の前髪を七三分けをするかのように、優しく留めてくれた。

「まずは貴方の心の窓を開けて。そしたら覗くから。」

景色が明るくなり、その子の表情も明るくなった。そしてイヤホンを外してみた。その子が呼吸をしている音。少しずつ早まる僕の胸を打つ鼓動の音。

「君を信頼するには少し早いかも。」

「うん。それがいいと思うな。意外と冷たい人だから。」

「でも開いてみるよ。窓を。怖いけど。」

そして僕はその子の白いワンピースを












青色に染め上げたんだ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

少しだけ不思議 折り合いさん @Nisenaoki7979

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る