第36話-首都への侵入
目指すは首都スルートにある監獄。
私がこの世界で目覚め、いきなり処刑されそうになったあの場所だ。
お父様とマルさんは首都でティエラ教会の事を調べているため、リンと二人で首都へと向かうことになった。
念のため、ミケさんとエアハルトにお父様宛にファウストたちのことを書いた手紙を届けてもらうことにした。
◇◇◇
「ふふっ、またカリスと二人旅だね〜」
私はリンに【
そしてさらに自分にも【
そう、しばらく前に思っていた通り、あっさりと
首都スルートまでは整備された広い街道が続いているので、障害物の心配もない。
馬車で向かえば、朝一番に出れば夕方日が沈む前にはたどり着ける距離だ。
晴れた暖かな日差しのが降り注ぐ中、砂埃を立てながら疾走するリンの隣を飛び、スルートへ伸びる街道を急ぐ。
途中何度か馬車とすれ違うが、この速度だと私たちの顔は見れないだろう。
「さっきの御者さん、馬車から転げ落ちてた」
「あはは〜びっくりしすぎだよ〜お父ちゃんはもっと早いんだから〜」
リンより早いとは……。
果たして私のお父様はどうやって首都に向かったのだろう。
(まさかマルさんに背負われて走ったなんてことは……)
「そういえば〜」
「なにー?」
この速度だと声を張り上げないと風切音で声が聞こえないと思ったけれど、リンにはしっかり聞こえているらしい。
リンも意外と声が大きいのでなんとか聴き取れる。
「カリスは〜どうやって首都に入るの〜?」
「えっと、一応身分証が……」
「人相書きは大丈夫なの〜?」
「……あっ……だめかも」
忘れていた。
身分証があっても人相や魔力波長でバレる可能性がある。
そして首都は入場門に魔法使いも配置されているのだ。
「あっ、やばい、どうしよう」
私は速度を落とし一度地面に降りると、リンもそれに合わせてスピードを落とす。
「……兵士の人たちには本当の話が伝わっているなんてことは……」
「う〜ん、どうだろう。まだそこまでは話が伝わっていないかも〜?」
道端の切り株に腰を下ろして頭を抱える。
村を出てから二時間ほど。すでに街道の先には首都の街並みが見えてきている。
「あっ、そうだ、リンたちの洞穴ってあったりする?」
「う〜ん、こっちの方には無いかなーもしかしたらお父ちゃんが作っているかもしれないけど〜」
「……どうしよう」
「あっ、じゃあ〜忍び込むしか無いんじゃない〜?」
「忍び込むって……どこから」
首都は城のある町の中心部がぐるりと城壁に囲まれている。
城壁の外側にある施設は牧場や工場などだ。
「ん~……首都に入らずに監獄に直接入ればいいんじゃない〜?」
「えっ、あそこに?」
おそらくこの街で一番警備が厳重であろう場所だ。
しかしそこは今回の目的地でもある。
「……やっぱり怖いよね〜他探そうか」
「……ううん、大丈夫。一度森に入って向かってみよう」
怖いかと聞かれれば怖い。
けれど、リンもここまで手伝ってくれているのだ。私が嫌がるわけにはいかない。
「あっ、私が森から穴を掘ろうか〜あまり得意じゃないけれど〜」
確か森側には高いフェンスがあって、門さえ越えることができればすぐに中に入れるだろう。
目の前に見える城壁とは違ってそんなに地中深くまで基礎は深く打ち込まれていないはずだ。
森からフェンスの内側までは、あの夜逃げた距離は直線距離だと百メートルぐらいだったかなと思い出す。
リンが穴を掘る姿は見たことはないが、ナックさんが掘ったと言うあの穴に比べれば短い距離だし大丈夫なのかなと思う。
「でもお父様に言わずに勝手に忍び込むとか……大丈夫かなぁ……」
「怒られちゃうかもね〜あはは」
「だよね……でも居場所が分かったけれど、お父様たちに連絡取れないし……」
「そうそう〜だから仕方ないよ〜」
私達で監獄棟へ忍び込んでホド男爵を探す。
(
「……ねぇ、リン? もしホド男爵を捕まえたとしてその後はどうすれば良いのかな」
「……さぁ〜? 拘束してお父ちゃんに連絡取るとか〜?」
「どうやって?」
「ん〜……どうしよっか、あはは」
道端に座り込んで、バッグの中からカップを出すと、リンも隣に腰を下ろした。
長距離を走り続けて流石に疲れているのか、額には薄っすらと汗が流れていた。
私はタオルを渡してから【
少し落ち着いたところで二人で水を飲みながらどうしようか頭をひねる。
「両手両足を縛って〜猿ぐつわしてそのまま放置するのは〜?」
「その後どうするの?」
「私が街へ走ってお父ちゃんを連れてくる〜?」
「間に合うかな……」
隠れているしても貴族が一人で居るということは無いと思う。
そうなると、ホド男爵だけを捕まえておくことは難しいだろう。
「それよりも〜捕まらないようにするほうが大変かもねぇ」
「あー……そうだね」
犯罪人が脱獄すると、死刑にされてもおかしくはない。
けれど、監獄に忍び込むと……不法侵入? どういう罪になるんだろうか。
どちらにせよ私は手配が回っているから、見つかって抵抗すればその場で殺されても文句は言えない。
見つかった場合素直に降参すれば、エアハルトから手紙を受け取ったお父様が助けに来てくれる可能性のほうが高いだろう。
(……すっごい怒られる気がするけれど)
「あ、そっか〜私がひとっ走り首都に入って、お父様をここまで連れてくればいいんだぁ〜」
リンが手をぽんと叩いて、ニコッと笑う。
確かに言われてみれば、私が首都に入れないなら入れるリンに呼んできてもらうのが一番早い。
「カリスもそれでい〜?」
「うん、それが一番早いかもね」
リンはスクッと立ち上がりお尻をポンポンとはたきホコリを落とす。
「じゃぁカリスはここで待ってて〜。あ、でもあっちの林のほうがいいかな〜」
指差す方を見ると、街道から五十メートルぐらい先に少しだけ木々が生い茂っている場所があった。
確かにこんな道端で座っていると兵士に見つかってしまう可能性もある。
「じゃぁ私はあそこで待ってるね、リン気をつけてね?」
「うん〜、じゃぁお父ちゃん見つけたら直ぐに戻ってくるから〜」
そう言って私はリンが首都に向けて走っていいくのを見送った。
「じゃぁ……少し休憩しようかな」
朝から洞穴での戦い、昼からはここまで飛んできたので少し疲労感がある。
せっかく日差しも暖かだし、少しだけ休憩しようと【
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