純粋、極まって

人生

第1話




 学校、主に朝や放課後――仲谷なかがい雪実ゆきさねの下駄箱にはそれなりの頻度で手紙が入っている。


 いわゆる、ラブレター。

 それも、同性……男からのものだ。


 なぜかといえば、



「おはようございます仲谷先輩っ」「仲谷さんおはよう」「先輩おはようございます!」



「ええ、おはようみなさん」



 ――ひとつ上の学年に、周囲から「お姫様」と呼ばれる姉がいるからだ。


 もちろん、手紙も全てその姉・仲谷夏夜かや宛てのものである。

 

 なんでも、夏夜の下駄箱に入れた手紙は、本人の目に留まる前に彼女のファンによって処分されてしまうらしい。かといって彼女に直接手紙を渡す勇気はないから、その弟に代わりに渡してもらおうという輩が後を絶たないのだ。


「……クソが」


 吐き捨て、雪実は今朝も自分の下駄箱の入っていた手紙を破り捨てようと手に取った。


「……?」


 そこで、気付く。


 二通ある。

 そのうちの一通はいつものように姉宛てなのだが、



 ――仲谷雪実くんへ。



「……オレ宛て?」


 初めてのことに多少戸惑いつつ、周囲に人もいないので軽く中を確認しようと封を切った。

 そして目を疑った。


「――――、」


 契約書かと見紛うほど、ぎっしりと。

 海外の小説ではないかと思うほどに細かい文字で――何か、書いてある。

 ずらーっと、便箋いっぱいに何か、書いてある。


「なんだこれ」


 素直に引いた。ドン引きした。


「なんだこれ」



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