クラスの中心で愛を叫ぶ (夏美パート)

 あれから冬彦君からは何の音沙汰もなく期末試験が終わり短縮授業が始まってしまった。どうして? 名前を書き忘れただろうか? それともお返事に悩んでるのかな

どうしても聞いてみたくなる短縮授業だから今日はお昼ごろに学校が終わってしまう

 冬彦君は学校が終わったらすぐにお家に帰っちゃう、どうする、教室で声をかけるしかないよね、うん、それしかないよね……放課後に声をかけてみよう、うん!


「起立―――礼!」

『ありがとうございましたー』

「短縮授業だからと浮かれ過ぎないように、以上」

「…………ね、ねぇ、黒田君?」

「うん? 俺に何か用?」


 放課後、いつもの担任の先生の言葉を最後に思い思いに帰ろうとする人。

友達同士で夏休みの計画を話し合う人、私も友達に声をかけられるが、それにごめんなさいと返して冬彦君の前に立ち声をかける、声うわずってなかったかな? へ、変な子だと思われてないかな?


「あー、妹返ってくる前に洗濯と掃除しないとだから要件あるなら手短に」

「あ、ご、ごめんなさい、えっと、その、先週、下駄箱に何かなかった?」

「先週…………思い当たらないな」


 私が次の言葉を探していると冬彦君が急かしてくる、そ、そうだよね妹さんの為にも早く帰らなくちゃいけないから手短に話さなくちゃ、意を決して、下駄箱に何かなかったかを尋ねれば何もなかったと言い放つ、え、ちゃんと入れといたよね?

もしかして気づかなかった? いや上履きの上に置いたもん、否が応でも気づくはず


「どうした冬彦君? って、小寺さん冬彦君に何か用事?」

「冬彦! 利康! 俺の家で飯食ってかね! 試験終わった記念で!」


 私達の話の間に久里山君と扉をあけ放ってもう一人冬彦君の友達が入ってくる。

ど、どうしよう話をする雰囲気じゃなくなっちゃった、えとえと……ああああ


「手紙って言ってたけど、俺に何か伝える事でも?」

「小寺じゃん、冬彦に何か用? 手紙? そういえば、冬彦の下駄箱の前でなんか男子がこそこそしてたな確か先週だ、声かけたら逃げちまったけど、そいつ手に手紙っぽいもの持ってた、もしかしてそれの事かな?」

「え?」

「そういや思い出した、先週じゃないが昨日上履きの奥にガムテープで画鋲が仕込まれてたな、思い切り踏んだわ、指先に穴あくと思った」

「大丈夫だったか冬彦君? 高校生にもなって嫌味な奴もいるもんだね」


 私の手紙、誰かに持ってかれてた? それも男子生徒が? どうして? 

もしかして、ラブレター渡したのが見つかって、その腹いせにその人が冬彦君に迷惑かけちゃったの。


「え、あ、う……その……」

「まあ、手紙を出したのって小寺なのか? 今でいいなら内容聞くけど?」


 冬彦君が二人との会話を止めて私の方をじっと見てくる、きっと今の私は酷い顔だろう茹でたタコのように真っ赤だ、どうしよう逃げる? でも逃げたら今までと一緒

勇気を出して初めて声をかけれたんだ、い、今しかないよね!


「…………ずっと好きでした! 付き合ってください!」

 

 言っちゃった、クラスの皆の前でそれも大声で、目が開けられない。

冬彦君はどんな顔をしてるんだろうか、それも分からない。


「えっと、その、へ、返事はいつでもいいです! ずっと待ってますから!」


 私はたまらず、その言葉を残して教室を逃げるように去る。

その後、私が上履きのまま、カバンも教室に置いて行ったのに気づくのはお家に着いた頃でした。


  




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