3-4
「「ただいま」」
「おかえり」
二人が戻ってきた。手にはいっぱいの果物を持っている。そう言えば、どうやって選んだんだろう? そう言う事をすっかり忘れていた。
「それどうやって選んだの? ラス、あれ大丈夫かな?」
『大丈夫。わたちが選んだから』
「……え~。話せるの!?」
『加護を受けているから聞こえるのよ』
とラスが教えてくれた。
紅葉が選んだのを二人は採ってきたようだ。まあ僕達が食べれなくても紅葉が食べれれば問題ないからいいか。
「じゃ紅葉用に作った食料ボックスに入れて、僕達は食べよう。だいぶ遅くなっちゃったね」
「わぁ。組み立ててある」
いっぱい買ったシートの一枚を地面に敷いて、その上に作ったテーブルとイスを設置。汲んで来た水で洗うと浄化出来る様で、採った食料を洗っておいた。
一つ物足りないのは、テーブルとイスがカサカサな事。やすりを掛けたところだけど……。街に着いたら雑貨屋で探してみよう。
「二人共、バケツの水で手を洗って。浄化作用があるから綺麗になるよ」
「「はーい」」
一応、紅葉用にテーブルと言うか台を作った。それをサツナとレンカの間に置く。台はイスと同じで違うのは柵がある事。一応落ちないようにと思って付けた。
果物に僕はかぶりついた。甘くておいしい。サクサクとしていて、リンゴみたいだ。
「紅葉おいしい?」
サツナが聞く。
『おいちいよ』
紅葉は、さっき食べていたのにまた食べている。モンスターっていっぱい食べるのかな? 採って来たので足りるだろうか?
食べ終わった僕達は、後片付けを始める。
テーブルとイスを畳み、敷いてあったシートでくるむ。
バケツには蓋を作った。クルッとスライドさせると、でっぱりでロックが掛かる様にした。ラスの保護で蓋がしてあれば、倒れても漏れない様になっているけどね。
食料ボックスには蓋はないけど、シートをかぶせておく事にした。
紅葉の巣箱は、二人が座るイスの下に設置した。設置と言っても置いただけだけど。
中には落ち葉を敷き詰めてある。紅葉用の食料ボックスも巣箱の横に置いた。
リアカーには、ホロも設置。
通常は、二人の上だけシートがある状態だ。後ろも付けると風の抵抗を受けるからだけど。まあラスの加護があるから重くはならないとは思うけどね。
シートは、何というかクリーム色? 白じゃないんだよね。くすんで見える色。
後ろのシートはクルッと丸めて畳んであるので、紐をほどけば垂れ下がる。途中に窓と言うか、透明シートの部分も付けた。これで後ろが見える。
「わあ、何これすごーい」
レンカがキラキラした目で言った。
喜んでもらえて嬉しい。
二人が乗り込み出発だ。
だいぶ陽が傾いてしまった。
街に着くのは夜かもしれない。
□
やっぱり夜になってしまった。
でも街だけあって明るい。一応ランプは、リアカーにぶら下げている。
あった。一番安い宿屋。貰った冊子には、昨年度のだけど情報も載っているので助かる。
「すみません。一晩いいですか?」
「おや、お疲れ様。一部屋ずつでいいかい?」
「「え~~!!」」
二人はどうやら嫌らしい。
「あの三人一緒の部屋でお願い出来ますか」
「だったら素泊まりの部屋になるけどいいかい?」
「あ、はい。構いません。それとこれ、置いてもらってもいいですか?」
「おやまぁ。これ配って歩いているのかい? ご苦労様だね」
チラシを置いてもらえる事になった。よかった。
部屋は、ランプがあるだけで後は何もない部屋だった。
ここは、冒険者用に素泊まりできる部屋を提供している宿で、朝食付き。朝食は、部屋に朝人数分運んでくれる。
布団もなにもないので、バイガドさんから貰った毛布にくるまって寝る事にした。
そして、紅葉だけどサツナの鞄にこっそり入れて連れて来ている。
僕は、寝る前に回るルートを決めようと冊子とにらめっこをしているんだけど、二人はバタバタと紅葉と遊んでいた。
「二人共、もう夜遅いからその遊びはやめようか?」
紅葉を持って両手を頭上に伸ばし手を放すと紅葉は滑空するんだけど、モンスターだからなのかかなりの距離を飛ぶ。それをきゃきゃと、二人は追いかけて遊んでいた。
これ絶対に、苦情が来ると思う。
ぺたん。
紅葉が僕の頭の上に着地した。
『一緒にあちょぼ』
「遊ぼうじゃないよ。もう二人と一緒に寝なさい」
『眠くないもん』
『オウギモンガは、夜行性よ』
「え!?」
僕達と習慣が違うのか……。
「じゃ起きていてもいいけど飛び回ったらダメ! 二人も宿の人に怒られちゃうからね」
「「はーい……」」
三人共しょんぼりしてるけど、これは仕方がない。
二人は毛布にくるまり、紅葉を間に入れて何やらおしゃべりを始めた。あれぐらいならいいか。
チラシを置く宿屋は、宿屋がいっぱいあるから値段で決めるかな。料金が一番高い所と、中ぐらいの所と一番低い所。
一番低い宿はさっき渡したから明日二か所に置いて来て、それからハンドメイドの事を聞きに、商業協会に行ってみるかな。
□
うーん。左手が重い?
うん? うおぉ! びっくりした。
目を開けると、僕の手の上に紅葉が張り付いている。どうやら寝ているみたいだ。
「なんだこれ?」
『夜中に紅葉があなたの体を登ったりして遊んでいたのよ』
遊んでいた!?
「寝返りを打ったら危なくない?」
『スリルを楽しんでいたみたよ。ぴょんぴょん跳ねたりすると、寝返りを打つのよ。そうしたら逃げて、また登ってって。その内疲れてそのまま抱き着いて寝ちゃったみたいね』
「そうなんだ……」
って、ラスは寝ないんだろうか?
「ねえ、ラスは寝てないの?」
『妖精は寝ないわ』
やっぱりそうなんだ。
「だったら紅葉の見張りお願いね」
『大丈夫よ。いたずらはしていないわ』
僕の体で遊ぶのは、いたずらに入らないわけね。
トントントン。
「おはようございます。朝食をおもちしました」
あ、もうそんな時間か。
「はい。ありがとうございます」
僕は、紅葉に毛布をかぶせてドアを開けた。
「お二人はまだ寝ているみたいですね」
「はい。あの、すみません。昨日煩かったですよね。二人共興奮しちゃって」
「苦情はきていないよ。大丈夫さ」
よかった。直ぐに止めさせたからかも。
あ、そうだ。
「あの商業協会って、どこら辺にありますか?」
「おや、そこにもチラシを配るのかい? 大変だね。ちょっと行った先に大きな青い建物があるからそれだよ。ここは冒険者協会よりでかいからね」
「そうなんだ。ありがとうございます」
それいいかも。一軒一軒回るより、商業協会にお願いをしに行った方がいいかも。
朝食は、サンドイッチだった。それを床に置いて二人を起こす。
「ほら起きて。朝ごはん食べちゃうよ」
「うーん」
サツナが毛布を頭にかぶる。
もう遅くまで話しているから……。
「リアカーで寝ていていいから食べちゃってよ」
僕は、二人を揺り起こす。
なんとか起きた二人は、ぼーっとしたままサンドイッチを頬張っている。
これ、夜に何か対策しないと、朝夜逆転しちゃうな。
朝食を食べ終わり、リアカーに乗り込んだ二人は本当に寝ているんだけど!
サツナは、紅葉を抱きしめて幸せそうだ。
ペットなんて、施設だったら絶対飼えなかったからな。
うん。だからと言ってこれはダメだよな。
でもまあ、今日は特別という事で。
リアカーを引いて僕は、商業協会を目指した。
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