3-3
「かわいいね」
「スラゼお兄ちゃんが来たら聞いてみようよ」
二人がいる辺りに近づくと、二人の会話が聞こえてきた。
僕に聞くってなんだろう?
二人が見えて驚いた。
シールドから二人が出ていたんだ!
「何やってるの? シールドの中に居てっていっただろう?」
「あ、スラゼお兄ちゃん、おかえり」
サツナが立ち上がり言った。
「あれ? ここはシールド内じゃないの?」
「え……」
二人には見えてないの?
『あぁ言い忘れていたわ。私が張ったシールドが見えるのは、私と同等の力を持つ者か、スラゼだけだからね。スラゼもネックレスの力で見えているのよ』
「そうだったの!?」
「あのね、こっち!」
って、珍しくサツナがちょっと強引に僕を引っ張っていく。行った先はさっき二人が屈んでいた場所だ。
よく見ればリスがいる。
先ほど採った果物をあげたのだろう。自分と同じぐらいの大きさの果物を器用に両手で持ちかぶりついている。
うーん。でもなんかリスとは違う様な?
「ねえ、このリスちゃん飼いたい! ちゃんとお世話する!!」
「え? 飼う!? ダメだよ。野生の子だし。この子を親が探しているよ」
サツナが言うけど、勝手に飼っていいものかもわからない。
このリス、大きさは片手ほど。まあしっぽを入れれば倍以上だけど。色は赤茶というか紅葉色っていうの? 変わった色をしている。
「えぇ! 迷子だって絶対!」
『いいんじゃない。テイムしておけば』
「テイム?」
『この子リスじゃなくて、オウギモンガよ』
「えっと? リスじゃないんだ……」
「え? この子リスじゃないの?」
僕がボソッと言うと、驚いたようにサツナが言う。
『見た目モモンガのモンスターよ。希少よ』
「えぇ!! モンスター!?」
「………」
僕が大声で驚くと、二人も驚いてリスじゃなかったオウギモンガを見た。
『大丈夫よ。ペットとして飼われるぐらい大人しいから』
「大人しいと言ったって……」
「モンスターでも平気よ! もうお友達だもん」
サツナが泣きそうな顔で僕に言う。レンカも頷く。
いつもと逆パターンだ。いつもは、サツナがレンカについて行く感じなのに。
うーん。余程連れて帰りたいのかもしれないけど、そんな余裕あるかな?
「あのね。確かに飼えるモンスターらしんだけど、珍しいんだって。見つかったら奪われちゃうかもしれないし、ここの方が食べ物いっぱいあると思うんだ」
「じゃ、頑張って食べ物取って帰る!」
「私も頑張る!」
って二人共粘るんだけど。参ったなぁ。
『ねえ、こういうのはどう? 私があの子に見た目の変化を掛けるわ。三人以外には、リスに見える様に。食べ物もこの子達がちゃんと採って持って帰るといいじゃない。オウギモンガ用に巣箱を作って食べ物入れも作ってあげたら? 作るの好きでしょ?』
「……うーん」
僕は、涙目の二人と、今も一心不乱に果物を食べるオウギモンガを見比べた。
はぁ……。
確かにかわいいし、襲ってくる様な感じもない。
ここで強引に帰ったら暫く口を聞いてくれなさそうだな。
「さっき、テイムがどうとか言っていたけど何? それをすると襲ってこないの?」
『そうね。家来にいや仲間にするって感じかしら』
そっか。それをすれば、襲ってこないってことかな。
「じゃ、それお願いしていい?」
『そうね。でもあなた達が飼うのならまずは、スラゼが試してみたら?』
「なんで僕? 魔法使えないんだよね?」
『まあね。でも私が使える魔法は使えるかも知れないでしょう?』
「………」
それならファイヤーとかヒールとかも使えてもおかしくないんだけど。
まあやってみて、ダメならラスにしてもらおう。
「わかった。試してみる」
『一つだけ言うと、出来ないではなくて出来ると思って使うのよ。人には、得意不得意があって私が使えても、全部が使えるとは限らないからね』
「うん。わかった」
僕は屈んでオウギモンガに話しかける。
「僕はスラゼです。二人の兄の様な存在で……僕達とお友達になって一緒に来てくれませんか?」
そう言えば、こうやって話しかけてわかるんだろうか? というか、テイムの仕方って、もしかしてテイムって言えばいいのかな?
『名前をつけてあげるのが効果的よ。受けて入れてくれれば仲間になるわ』
「名前? いきなりいわれても……」
「
って見たまんまの名前をサツナが叫んだ。
「うん。それにしよう」
「わかった。紅葉ね」
『あら……』
「うん? どうしたの?」
『ちょっと失敗しちゃったみたい』
「え? テイムできなかったの?」
『うん。まあね。こうなっちゃたわ。チェック』
******************************
オウギモンガ【稀代】
【ランク:S】
愛称:紅葉【命名:サツナ/レンカ/スラゼ】
状態:良好
【眷属:サツナ/レンカ/スラゼ】
スキル:滑空/サーチ/感知
******************************
あ、本当だ。ランクがSで低い。
「眷属ってなってるけど? これがテイムって事? 出来てるみたいだけど」
『うーん。逆になっちゃった。先にチェックしてからテイムに挑戦してもらえばよかったんだけど……』
うーん。言っている意味がわからないな。
「どういう事?」
『こういう事よ。チェック』
******************************
名前:スラゼ
種族:人間
レベル:10
HP:27/27
MP:202/505
力:5
素早さ:25
魔力:313
妖精ミミミラスの加護
【オウギモンガ紅葉の加護】
******************************
うん? あれ? 紅葉の加護がついている?
「え? どういう事?」
『だから、紅葉があなた達を加護に置いたのよ。まあ、あなた達を襲う事はないわね』
「もしかして二人も紅葉の加護がついたの?」
『そうよ。でもランクS以上でないと見えないから大丈夫よ』
よくわかんないけど、見えたらまずいのかな?
まあ一応、大丈夫と言う事で果物などを取って来てもらうかな。
「二人共約束通り、食べ物を……」
「うん。行ってくる!」
紅葉をサツナが抱っこして、二人は嬉しそうに森の奥へ向かった。
「あ! ラス! 二人について行って!」
『大丈夫よ。紅葉がいるから』
「え……でも」
『それより戻って来るまでに作っちゃったら?』
「……はい」
本当に大丈夫かな?
いつも通り木を切りぬいて紅葉の巣箱を作った。そして紅葉用の食料を入れるのに食料ボックスをもう一つ。
ふう。今日はいっぱい作ったな。
そうだ。紅葉も増えたし、ついでにホロ用の枠も作ろう!
「ねえ、ラス。ホロ用の枠も作りたいんだ」
『あなたも好きねぇ』
「シートとシートをくっつけるのに、糸みたいのないかな?」
『樹脂を糊にしちゃう?』
「え!? そんな事も出来るの?」
『出来るわよ。錬金術だけどね』
「へえ」
『ちなみに錬金術は、やろうと思えばスラゼでも出来る様になるわよ』
「そうなの? 魔法とは違うの?」
『うーん。違うけど。才能は必要かもね。スラゼがこうやって物を作るのと一緒よ。あなた器用だわ』
「好きなんだよね。作るの」
『では、樹脂でくっつけますか』
こうしてホロも作っていった。
僕としては、採取よりこっちの方が楽しんだけどなぁ。
うーん。ハンドメイドやってみようかな。
こうやって森に入ったら木を取っておいて、暇な時に作るとか。
リアカーには、無限に入るみたいだし……。
後でラスに相談してみよう。
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