2-1 思わぬ形で旅立ちです
魔法雑貨には、魔法に関するアイテムがいっぱいあった。って、杖も売っている。
「凄い面白いね」
『こっそり錬金術もやる?』
「錬金術って?」
『あぁ、そこからね。だったら今はいいわ。まずは、リストを買いましょう。冒険して色々知ってからでもいいと思うから』
「うん。わかった。えーとこれかな? 魔法の基本。これでいい?」
『選ぶだけならそれで十分だと思うわ』
じゃこれと。うわぁ、安い銅貨10枚だ。ってこれ本と言っても一枚の長い紙が谷折り山折して畳んである。
「あと、何かいるかな?」
『そうね。明かりを灯すランプでもあるといいかもね。私も明かりを灯せるけど、それやっちゃうと目立つと思うのよ』
「わかった。明かりね」
そういうコーナーを見ると、形も大きさも様々だ。
キャンプ用のちょっと大き目で吊るせるランプと体に着けて前を照らすライトの二つを買う事にした。両方とも魔力を注ぐと明かりが灯るらしい。
あと、MPポーションも買った。基本、ラスが魔法を使っても僕のMPは消費しないらしい。けど、ランプに注入したりするし、ラスにずっとMPをあげている状態だった。
確かにそんな事を言っていたけど……。
僕のMPの容量が多いのは、レベルが上がったと言うよりは、ずっと消費し続けている事で、MPの最大値が増えて行ったって事らしい。
説明されたけどよくわからなかった。最後には、つまり消費続けるだけでも経験値が貰えるって事よ。魔力限定でね。だって。
魔法にもレベルが存在し、よく使う魔法ほどレベルが上がる。それと一緒だと言っていた。
MPの容量が増える事はいい事だと思うので、原理がわからなくても大丈夫だろう。
『あ、いいのがあるわ!』
「いいの? どれ?」
『そのネックレスよ。掘り出し物だわ!』
たしかに掘り出し物というだけあって安い。銅貨100枚。こういうので100枚だと逆に偽物じゃないかと思うちゃうんだけど。
「これって何?」
『売り物としては、イミテーションのようね』
それって、役に立たないのでは?
「これ何かに使えるの?」
『ふふふ。それはお楽しみ』
まあいっか。綺麗なエメラルドグリーンの鉱石の塊。それに穴を空けチェーンに繋いである。ただ、僕がつけて似合うかどうか。
あ、ローブの中につければいいか。
「さてと戻るかな。それにしても鞄がもとからパンパンなので、買った物が入らない」
『少しの間、我慢して持っていて』
「少しの間?」
『そう。少しの間』
「はぁ……」
『そうだ。さっき買ったネックレス出してもらっていいかしら?』
外に出ると、ラスが言った。
「うん」
ちょっとした物陰に隠れ、首から下げたネックレスをローブから取り出した。
ラスが触れると、驚く事に形が変わった!
ちゃんとしたカットされた宝石の様になって、少しだけ光を帯びている。
「え? 何をしたの?」
『まあ、いわゆる錬金術?』
「え!?」
『効果は、私の魔法が見える様になるってところかしら』
「……? それ役に立つ?」
『役に立つと思うわよ。そのうちわかるわ。でも、イミテーションって事にしておくのよ。まあ、特段人に見せなくてもいいけどね。見る人が見れば、高価な物だとわかっちゃうだろうし』
「高価なもの……になったのか!」
『よかったわね』
「うん。ありがとう」
戻るとまだ、魔法の適正調べが行われていた。大人気だな。
あ、アーズラッドが見学している。終わったのかな?
「ねえ、どうだった?」
「どうだったって。俺に魔法なんて使えるわけないだろう?」
「じゃ受けないの?」
「受けたよ」
「そっか。そうだよね。受けたからわかったんだよね」
「……まあいっか。で、買ってきたの? リストって……何買ってんだ。お前」
僕が手に持っていたランプを見て言った。
「あ、これ? なんか冒険者なら持っていた方がいいみたいだからさ」
「バカだなぁ。そんなの施設にあるやつもらえばいいだろう」
「くれるの?」
「取り合いになるだろうけど、もらうんだよ! って、お前それ買っちゃったら持ってるからいらないだろうってなるだろうに!」
「あぁ……そうかもね」
「まったく。まあいいや。施設に戻ろうぜ」
「うん」
施設に戻ると、アーズラッドは物置に行くと行ってしまった。
『今のうちに決めておきましょうか』
「うん? あぁ、使える魔法ね」
『私的には、サーチとかの方がいいと思うの。後は、シールド系』
「おい。ここをでるぞ」
「うん? あ、お帰り。出るってどこいくの?」
「とりあえず、ここの領地を出よう」
そのつもりではいたけど、急だ。どうしたんだろう?
「随分大きな鞄だね?」
さっきまで持っていなかった鞄をアーズラッドは持っていた。
「色んな物を詰め込んで来た」
「え? 勝手に持って行くの? これ、公平に分けるって言ってなかった? 怒られるよ」
「バカかお前。公平って言ってもな。全員に当たる分なんてないんだぞ。それに他の奴も持って行っている!」
「でも。ちゃんとお金もらってるし」
「お前なあ、いいか、俺達は今度寝床はないんだ。普通に建物の中で寝ようと思ったら毎回お金がかかる。貰ったお金なんて、あっという間になくなるんだよ。俺達Fランクだぜ? 稼ぎなんて今までと違ってないんだよ!」
今までもなかったと思うけどな……。まあそれが返還されて金貨一枚もらったけど。
「あぁ、もういい! お前トロ過ぎ! 俺は行くからな!」
「え? あ……」
大きな荷物を抱え一緒に行こうと言っていたはずのアーズラッドが、行ってしまった。
「置いていかれた……」
『問題ないわよ。私がいるから』
「……でもなぁ」
彼は、どんくさい僕の面倒を見てくれた。読み書きとか計算とか教えてくれたのも彼だ。
「ちゃんとお礼、言いたかったな」
『次にあった時にでも言えばいいんじゃないかしら? 永遠の別れでもないでしょう』
「うん。そうだね。でも、もしかしてこうなるってわかってた?」
『何となくね。あなたと会話は出来なかったけど、この十年間あなた達を見ていたからね』
「そっか……」
『彼は、あなたより年上だからある程度、知識を持ってここに来た。自分がどんな目にあっているのかも、あなたより把握していたのよ。まあ、もっと言えば、スラゼの様なあまり欲がない人間は、損をするって事かしらね』
「損したの僕?」
『たぶん施設の子が、アーズラッドの様にこっそり持ち出しているはずよ。まあわかっていても見て見ぬふりをしてくれているみたいね』
「え? なんで?」
『まあ、ご祝儀的な? 一人立ちおめでとう。みたいな? どうせ処分するものだったのだろうし。ぼろぼろで廃棄処分だからね』
「廃棄? 使えるのに?」
『そうよ。一般的にはね』
「そうなんだ……」
その日の夜に施設に泊まったのは、僕を含めたった三人だった。僕より年下で、冒険者を選んだ子。
違う施設に移る事も出来たと思うんだけど、仲が良かった二人だったからな。別れ別れになるのが嫌だったみたいだ。
でもどうするんだろう。
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