1-4
第七魔導団所属のシュラーラさんという人が教えてくれる事になった。王国魔導士の証の銀色の魔導士の法衣を着た女の人だ。年齢は、僕より十上らしい。若手で凄腕という事らしいけど……。
「よ、宜しくお願いします」
「あなた、随分ちぐはぐね?」
「ちぐはぐ?」
「守備だけ万全で、杖はそれなの? まあ威力は、自分の魔力で決まるけど、あまりボロイとすぐに壊れるわよ」
そうなのか……。
「こ、壊れたら次はちゃんとしたのを買います」
「そうしなさい。まずは、魔法の系統を探してみましょうか。人によって複数使える人もいるわ。ではまず、攻撃系から」
「はい!」
僕は、的に向かって魔法を放つ事になった。的と言っても薪一本。
「まずは、ファイヤーから。素質があれば、出来るはずだから」
「はい!」
って、ないから出来ないですけどね。
「ファイヤー」
杖を薪に向け言うも何も起こらない。
「では次、ウィンドカッターよ」
「はい。ウィンドカッター」
驚く事に薪が、刻まれた!?
「え!」
僕は驚いて、唖然としてしまった。
ギャラリー達が、拍手している。
アーズラッドは、すげっと自分の様に喜んでいるんだけど。どうなってるの?
ラスを見るとウィンクを返された。どういう意味だろうか?
「よかったわね。あなたは風系の魔法が扱えるわ。後は、ヒールができるかどうかやってみましょう」
「ヒールですか……えっと。ヒール」
目の前の怪我をした犬にヒールを試みるも治癒しなかった。
「ヒールはなしね。次はシールドね」
「え、まだやるんですか?」
「まだって……知っておいた方がいいでしょう?」
「あの、言えば使えるのは使えるんですよね?」
「そうよ」
「だったらリストを貰えれば、自分で確かめてみますけど?」
段々ギャラリーが増えて来て、僕的には早く終わらせたい。
「リストねぇ。それは冒険者協会か魔法雑貨に売っているわよ」
「え? そうなんですか? ありがとうございます」
「そう。じゃ、ついでだから魔法の適正調べたい人はいるかしら?」
「「はーい!!」」
ギャラリーの中にいた元施設の男子達がほぼ全員手をあげている。って、アーズラッドも挙げていた。魔力あったのかな?
「僕、買いに行ってくるね」
「おう! 無駄遣いするなよ~」
っとアーズラッドに言うと、手をひらひらとしてシュラーラさんの方に行ってしまった。
はぁ……。疲れた。
「どうなってるの?」
僕はさっきの魔法の事をラスに聞いた。僕は、魔法が使えなかったんじゃなかったのか?
『私がやったのよ』
「え? なんで?」
『召喚師だとバレないためよ』
「バレたらまずいの?」
『襲われるかもしれないわ。あなたのお兄さんは連れ去られたのよ。あなたはもう寝ていたから守る事ができた』
「え……。じゃ、やっぱりお兄ちゃんは生きているの?」
『今も生きているかはわからないけど、連れ去ったのだからすぐには殺さないと思うわよ』
「そっか!」
『お兄さんを助け出したいとか思ってる?』
「だめ? 無理?」
『だめでもないし、無理でもないわ。ただあなたはまだ弱いし、色んな意味で力をつけないとダメよ』
「色んな意味って?」
『あいつらは、雇われて襲ってきたと思うわ。バックには組織がある。それをつぶさないと助け出せないって事よ。その為には、信頼とそれなりの権力がいるわ。あなたは冒険者だからランクを上げるのが一番手っ取り早いわね』
「あ、そっか。だから魔法……」
『確かに私が使ったけど、本来はあなたに命令されて使ったりするの。だからあなたが使ったのと同じって事』
「もしかしてそれでリングを外してって言ったの?」
僕の右腕には、買ったリングはしていない。鞄の中にしまってある。
『あれをつけていると変だからね。それなりの人は、わかちゃうから。あのリングには、私の魔法を入れておいて、もし私が傍にいなくて使わなくちゃいけなくなった時に使うといいわ』
そういう場面が無い事を祈りたいけど、そうしておいた方がいいよね。
「わかった。お願いするよ」
『リストを手に入れたらどの魔法を使える事にするか決めましょう。あまりにもあれもこれもだと、逆に目立っちゃうからね』
「ねえ、なんでヒールは、出来ない事にしたの?」
『ヒールが扱えると、仕事は増えるわ。扱える人が少ないからね。でもそうなると、目立つし自由に動き回れないわ。最初は目立たない方がいいのよ。色んな意味で、目をつけられるからね』
「うん。わかった。ラス、色々ありがとう。これからも宜しくね!」
『任せて! 十年分働かせてもらうから』
「うん。ありがとう!」
僕は、魔法雑貨に行くことにした。冒険者協会は、忙しそうだったからね。
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