第二部《出エジプト記》

 その後、王国エジプトで一時は栄華を味わう『神に勝つ者イスラエル』とその子孫たち(以下『神に勝つ者イスラエル』の民)。

 しかし時がたち、国王が変わり、他民族である『神に勝つ者イスラエル』の民を奴隷として扱うようになる。



「あーそういえば、子孫繁栄させたるて『いと気高き父アブラハム』と『神に勝つ者イスラエル』に約束してたの忘れてたわ。(2:23)」

 

 (神は見守ってるんじゃなかったかよ! 奴隷になってからもう王が何代か変わってるよ!)



 王宮で育った男、マシャモーセ。しかし彼は赤子の時に王女パロの娘に拾い上げられた奴隷の子であり、マシャ拾われた者と名付けられた。


 彼は長じたのちに出生の秘密を知り、奴隷を助けるために、思わず王国兵士を殺してしまう。逃亡生活を続けるマシャモーセ


 かくして神は、『神に勝つ者イスラエル』の民の中から、たまたま神のいた場所に通りかかった運の悪いおっさん、マシャモーセに目を付ける。


「おい。俺様はオマエの先祖に約束した神だ。約束の地カナンに連れてってやるから、『神に勝つ者イスラエル』の子孫連れてこい。オマエがリーダーな」


「え、えっと、どちらさんで?」


先祖アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神に約束した神だつってるだろ、先祖の名前も知らねーのかよ。そうだな、俺様なんでもできるから『何にでもなれる者ヤハウェ』とでも呼んでくれ」


「い、いや、私、く、口下手なもので、とても民を導くなんて……」

 

「そんなん口が上手い奴アロンにやらせとけばい-だろ。魔法神の力が使えるようにしてやって、奇跡の杖やるから、コレで奇跡を行ってだまくらかして連れてこい。とにかくオマエがヤレ」


「でも……」


「オマエいい加減にしろよ。ブチコロすぞ」


(中略)


 そして始まるマシャモーセ VS 王国エジプト宮廷魔術師との魔法大戦。河は血になり、モンスターカエルやイナゴが召喚され、疫病が流行り、空は暗闇となった。さらに、王子、王国全土の民の長子と家畜の長子が変死する。

 神の力により、王国エジプトの王は既に神に操られていた。


「もういいから出てってくれ」


 かくしてマシャモーセは『神に勝つ者イスラエル』の民を連れ、約束の地カナンへと旅立つ。王国エジプトの民衆から略奪してから出ていくのは忘れない。

 この時、『神に勝つ者イスラエル』の民の家にしるしをつけ、その家は通り過ぎ過越、それ以外の家からすべて略奪しだので、彼らは毎年コレを記念した過越祭りをする。イエスが最後の晩餐やってるアレだ。


 (王国エジプトの民衆側から見るとヒドイ。「おカシラ、あの時は略奪でぼろ儲けでしたね」という山賊パーティみたいだ)


 しかし海辺に近づいた時に王国エジプトの追手が! 王は既に操られてるので、完全にヤラセである。マシャモーセが脱出したトコでワザと追いかけさせ、さらにギリギリのトコ海を二つに割るで助ける。

「見た? 見た? 今のカッコよかったろ? こんなん俺様にしっかできねーだろ。コレで俺様の凄さが王国エジプトの奴らに分かったろ?」


 (神の凄さを見せつけるためだけのために、大地を荒らされ、王子と民の子と家畜の子が死んだ、王と王国エジプトは完全にとばっちりである)


(中略)


 約束の地カナンの近く。もちろん先住民が住んでいるカナン人、ヘテ人、アモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人


 神「オマエラあそこ行って全員虐殺してこい」


(コレはひどい。なろう脳で読んでると、カナンの先住民が、盗賊に襲われるエルフ村にしか見えない)


(中略)


「あ? 、ダレが偵察しろなんて言った? 俺様がいつそんなこと言った?」

「偵察に賛成した奴はダレだ? オマエか? オマエもか?」

「俺様が力を貸してやるつってんのに、勝手に偵察へ行ったってことは、俺様の力を信じてねえってことだな。ああ?」


「連帯責任で、全員40年の放浪だ。約束の地カナンへ行けるのは、偵察に反対したやつと子孫だけ。偵察に賛成した奴は野垂れ死ね」


 (これもヒドイ。偵察は戦争の基本では? という人間の理屈は神には通じない)

 

 マシャモーセ「え? 俺も? 40年? 放浪?」

 

 (モーセもとばっちり。この辺から、モーセが無茶ブリ上司の下の中間管理職に見えてくる。経験者は胃がキリキリしてくる)


 放浪中「こんなハズじゃなかった」「王国エジプトの奴隷の方がマシだった」「オマエが連れ出したせいだぞ」

 マシャモーセにぶー垂れる『神に勝つ者イスラエル』の反対者


 マシャモーセ「ちょ、おま、オレがどんだけ苦労してると。上司に聞こえたらどーすんだよ」


 神「聞こえてんぞ」「言った奴は死ね」どんどん減る『神に勝つ者イスラエル』の民。


(中略)


 「もう放浪やめて、このへんで畑でも作って住めば都だよ」「肥沃そうだな」「んだんだ」


 マシャモーセ「ちょ、おま、シーッ」


 神「聞こえてんぞ」「言った奴は死ね」またどんどん減る『神に勝つ者イスラエル』の民。


(中略)


 「あー腹減った」「ホント腹減った」「クソ不味い神の食物マナしかねーし」またぶー垂れる『神に勝つ者イスラエル』の民。



 神「ほー、腹が減ったと」「俺様が用意したメシが不味いと」「すまんな気づかなくて」「よっしゃ、オレ様がウマイモンを腹いっぱい食わせてやろう」


 「やったーさすが神」「まさに神」「ステキ! 抱いて!」「肉だー」手のひら返す『神に勝つ者イスラエル』の民。

 


 「もうおなかいっぱいだ」「こんなに食べたのは久しぶりだ」「肉だー」

 「んー、聞こえんなー。腹が減ってたんだろ。もっと食べろよ。まだまだあるぞ。ホラ、俺様が食わせてやろう」

 「ちょ、ン、ムググ.....」 ..... 「パーン」 さらにどんどん減る『神に勝つ者イスラエル』の民。


(中略)


 マシャモーセ「もうこれ以上、言うこと聞かない民を率いていくのは(心の声:もっとワガママな上司の言うこと聞くのは)、私には無理です。いっそ殺してください」(血涙)

 神「んー聞こえんなー」


 無茶ブリ上司『神に勝つ者』の民言うこと聞かない部下に挟まれ、マシャモーセの中間管理職な日々は続く。

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