サムライ うんちんマン



「虎や忍者と戦いたい」

「…は?」

「ぼくはサムライになりたい」

「……どうやって」

「誰かに……弟子入りをする」

「誰にだよ」

「ゴン……ちゃん」

「誰なんだよ」

「ゴンちゃんは……サムライに憧れる人」

「侍ではないのかよ」

「サムライに憧れながら、家でポップコーンとか食べて映画を見てる人」

「そんな奴に弟子入りしてどうするんだよ」

「ゴンちゃんは前世が……」

「前世が?」

「ヤギ」

「山羊かよ」

「メー、ってなくやつ」

「そうか……」

「ああ。だからとうもろこしが好きなんだね」

「いや知らねえよそんなことは。知るか」

「じゃあどうしよう。ゴンちゃんに弟子入りしようか」

「してどうするんだっつー話だよ。前世が山羊でポップコーン食いながら映画見ている侍マニアによ」

「それはほら……。その後の自分の努力でなんとか」

「ゴンちゃん略していいだろうが!」

「誰かがそばにいてくれるからがんばれるとか、あるじゃないか!」

「別にゴンちゃんでなくてもいいだろうが!」

「じゃあきみがそばにいてくれるとでも言うのかい!」

「友達付き合いでよけりゃあな!」

「…………へへ……」

「…………おう……」




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「うんこうんこちんちんマンってのはどうだろう」

「帰ってもらえ」

「え。どこに?」

「どこへなりとも。とにかく帰ってもらえ」

「うん…。じゃあ、さようなら」

 ……。

 ……。

「……帰ったか?」

「ううん、部屋のすみで体育ずわりをしている」

「帰ってもらえ」

「えー」

「えーじゃなくて帰ってもらえ。今すぐに。これから晩御飯だからとか言って」

「うーん…………」

「いいから」

「うん……。じゃあ。そうしてみる」


 …………。

 …………。


「……帰ったか?」

「ううん。テーブルにしがみついて泣いてる。帰りたくないって」

「…………帰ってもらえ」

「どこにも帰る場所がないんだって」

「……じゃあ、改名しろ。まずは改名しなさいと言え」

「うーん…………。それはボクのレゾンデートルだから無理って言ってる」

「そんな価値観は今すぐ改めなさいと言え!」

「じゃあもう直接きみが話してよ!!」

「そうしたら手が出ちゃうだろうが!!」


 ぎゃーぎゃー



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