番外編 美月との出会い

隣の家に、同い年の子供が住んでいる。

当時5歳のユウキはその情報だけを持って、会いに行った。


「あのー、俺と同い年の子が居ると聞いたんですけど?」

「そ、それって私·····?」


後ろからつつかれて、振り向いた先にそいつは居た。


「な、女じゃねぇか!」

「ひいっ」


第一印象は、見た目は悪くない、うじうじした奴。

正直、最悪な第一印象だった。


「俺は御影ユウキ」

「わ、私は小川美月です」

「なんでいちいちビビんだよ!」

「ひいっ」


こいつとは関わらないようにしよう。

そう思った。


「なーんで、お前がいんだよ」

「えへへ、着いてきちゃった」


俺は毎日、山で遊んでいた。

それにこいつが、加わるようになった。


「おい! 美月ー!」


ある日、かくれんぼをしていたら、美月が居なくなった。

夕焼けのチャイムはとっくに鳴っている。


「帰るぞー、出てこーい!」


一向に出てくる気配が無い。

日が段々と落ちてくる。


「絶対に見つけてやるからな! 待ってろよ」


それから約2時間が経った。


「くっそ、見つからねぇぞ!」


手当り次第に、歩き回る。

すると突然、泣き声が聞こえた。


「うぇぇぇん」


その声を辿ると、やはり美月だった。

木登りをして、降りれなくなったらしい。


「どうする、どうする·····」


手を伸ばして届く距離では無い。

ジャンプをしても無理だ。


「だったら·····」


ユウキはひとつだけ思いついた。


「美月、俺のとこに落ちてこい」

「は?」

「だーかーら、落ちてこい!」

「嫌!」


俺が撒いた種だ。

自分でしっかりと落とし前をつける。


「俺が絶対に支えてやるから、信じろ」


昔から、ユウキの「絶対」には強い気持ちが込められていた。


「·····わかった、ユウキ君を信じる」

「よし、来い!」


良くも悪くも、この出来事が一番記憶によく残っている。


「·····やったー! 私生きてる」

「だから言ったろ? 俺を信じろって」


奇跡的に美月は無傷で済んだ。

ユウキは、足首に軽い打撲、どちらにせよ軽傷だった。


「帰るか·····」

「うん!」


あの日に2人で歩いた時間は、宝物のように感じる。


「ユウキ君」

「ユウキでいいよ」

「ユウキ、今日はありがとね」


満月が綺麗な日だっただろうか。

今でも思い出す。


「美月、俺と友達になってくれよ」

「え·····? 良いの!?」


ユウキにとって初めての友達。

当然、美月にとってもだ。


「俺たちはずっと友達で居ような」

「絶対だよ?」

「あぁ、絶対」


幼い頃に、交わした約束を今でも2人は時々思い出すのであった。





















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