第70話 もっと慎みを持ってくれよ·····

ホテルに帰ってからも、ずっとユウキは悩んでいた。


「あのさぁ、凌太」

「なーに」

「ハーレムって現実的?」

「は?」


凌太は迷わずに、疑問符を投じてきた。


「現実的なわけねぇだろ、現実を見ろよ」

「移住するしかないか·····」

「アフリカに?」


多重婚は現実的では無い。

法律が許さない。


「モテる男ってのは辛いな·····」

「?」


モテる男の悩みは、誰にも分からない。


「どうもー、三橋いる?」


ユウキは階が違う、女子の部屋を訪れていた。

冷ややかな視線をたくさんの浴びてしまった。


「早く入って」

「え? ちょ、強引だな」


出てきたと思ったら、すぐに部屋に引き込まれた。

部屋には三橋しか居なかった。


「御影がこの階に居るの先生に見られたら、怒られるんだよ」

「なんで?」

「この学年が男女の問題が、たくさんあったからだよ」

「誰だよ、迷惑だな」


お前だよ。

そう言いたくなるのを、三橋はグッと堪えた。


「とにかく、見回りの先生が来る前に帰って」

「へーい」

「ちょっと良いか?」

「「っ!」」


グットタイミング!

ちょうど先生が見回りに来た。

しかも俺が前にコテンパンにやられた先生だ。


「ちょっと待ってください!」

「どれくらいだ?」

「いっ、1分で」

「·····短ぇよ」


俺は隠れる場所を探した。

荷物がパンパンすぎて、隠れる場所が無い。


「どーする? これ」

「·····御影、我慢出来る?」 

「え? 良いの?」

「やむを得ないから」


1分経つと、先生は入って来た。


「何かバタバタしてたよな」

「そ、そうですか?」

「何かお前、顔赤いぞ」

「沖縄の日差しにやられて·····」


言い訳が下手くそすぎた。


「こんな早くにベットに入って、具合でも悪いのか?」

「頭がクラクラしちゃって」

「医者を呼ぶか?」

「平気です!」


変な優しさを、見せるんじゃねぇよ。

こっちは2人して、心が体調不良だよ。


「安静にしてるんだぞ」

「はい」


嵐は去っていった。


「御影、もう平気だよ」

「暑かったー」


ユウキはずっと、ベットの中で三橋に膝枕をされている状態だった。

女子特有のフェロモンにやられて、クラクラしていた。


「ごちそうさまでした」

「変態!」

「ふごァ」


ビンタ一発頂きました。

ありがとうございます。


「それで話って何?」

「あぁ、多重婚についてなんだが·····」


ユウキが多重婚への思いを語ること、約10分。


「どうしてそんな考えに至ったの?」

「モテすぎて辛いんだよ」

「んん?」

「複数人から一人を選ばないといけないなんて、俺には辛すぎる」


これを真面目に言っているのだから、恐ろしい。


「その頭腐ってる?」

「へ?」


急な辛辣な言葉に、脳がついて行かない。


「本当に好いてくれてる子に、申し訳ないとは思わないの?」

「ハーレムが?」

「そうだけど」

「まぁ、そうだな」


ハーレムは逃げだ。

一人に決めきれない、優柔不断な男の逃げだ。


「御影が男なら、しっかり選んであげなよ」

「俺は男だ!」


御影ユウキは、産声をあげてからはずっと男だ。

証もしっかりとある。


「ありがとな! 三橋、俺を男にしてくれて」


改めて気づかしてくれてありがとう。

俺は、女々しい男になる所だった。


「男にしてくれて?」

「あれ? どうして男子がいるの?」


部屋には、三橋以外の女子が帰ってきていた。

まずいところだけを聞かれていた。


「別に良いんだけどさ、このベットはみんな使うんだよねぇ·····」

「あらら」


完全に誤解されている。

まだ俺は、──だ。


「「何もしてない!」」


この後、誤解を解くのに30分かかった。

















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