第63話 破壊神、御影ユウキ
「どうしてお前が居るんだ·····?」
ユウキは目の前で起こったことが、理解できなかった。
どうして居るはずのない者が居るのか。
「今はそんな事は良いでしょ? もう花火が上がるわ」
「マジで!? じゃあ俺もう行かなきゃ」
せっかく助けてくれたのに、申し訳なく思った。
それでも小倉は、背中を押してくれた。
「早く行きなさいよ、先生が来ちゃうわよ」
「あぁ、決着をつけてくる」
遠ざかるユウキの背中を見て、小倉は少し安心したように笑った。
「やべぇな、もうカウントダウンの声が聞こえる」
外からは、花火までの時間を数える声が聞こえた。
もうあまり猶予は無いようだ。
「約束を破ってたまるかよ!」
多分、俺を助けるまでにだいぶ無理をしてくれたのだと思う。
本当に馬鹿だと思う。
「でも俺はその馬鹿たちに救われたんだ」
普通はねぇぞ。
こんな大脱走劇なんて。
無我夢中に階段をかけ登った。
「──待たせたな」
花火が打ち上がると同時に、屋上へと着いた。
「やっぱり君か·····」
凛は俺を視界に映すと、分かりやすく下を向いた。
「まぁまぁ、そんなガッカリすんなよ」
「·····バレた?」
「バレバレだ」
そんな安い演技、見破ることなんて簡単だ。
俺は早速本題に入った。
「お前が男を嫌う理由、俺は聞いたぞ」
「誰から?」
「·····私」
花が、小さな声で言った。
彼女の体は震えていた。
「僕は君の事を、少しは信用していたんだけどね」
「私は凛ちゃんの事が大切なの」
「·····大切? そんな言葉を軽々しく使うな」
凛の雰囲気が急に変わった。
柔らかな雰囲気から、冷たい蛇のような目付きに変わった。
「君は地獄を知らない、だからそんな無責任な言葉を吐けるんだよ」
「違う! 私は凛ちゃんを本当に·····」
「もう黙っていてくれないか? 花、君にはうんざりだ」
2人の距離を引き剥がすように、花火の音が大きく響く。
綺麗に咲いては散っていく。
「·····御影ユウキ、君は一体何のつもりなんだ、正義のヒーローにでもなったつもりか?」
「正義のヒーローが説教受けるかよ」
「僕と花の仲を壊したのは君なんだよ」
んな事は重々承知だよ。
そんなもん後から全部直してやる。
「お前を縛り付けるものは何だ?」
「·····それを知ってどうするんだい?」
「俺が全部、ぶっ壊してやるよ」
この俺が首を突っ込んだ以上、もうタダではおわれないぜ。
「父親か何だか知らんが、お前の枷は俺が外してやる」
「それ、本気?」
「本気の本気、大マジだ」
「·····バカみたい」
どんなに冷たい目で見られようと、もうユウキは止まらない。
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