第23話 悩みの種は成長する

「はぁ·····」


俺は部屋のベッドでうなだれていた。

学校から帰ってきてからずっとだ。


「兄、ご飯はー」

「·····」

「兄、風呂」

「·····」


何も返事をしない俺に、痺れを切らして紗奈が部屋に殴り込んでくる。


「返事くらいしろー!」

「ぐはぁ」


助走をつけたボディプレス。

中々のダメージだ。


「痛ってぇな、何だよ」

「こっちのセリフだよ、ずっと無視しやがって」

「それは申し訳ない」


聞こえてはいた。

返事するのも億劫なくらい、悩んでいた。


「相談に乗ってくれるか?」

「はぁ? 良いけど」

「これはとある人たちの話なんだけど」


簡潔に、名前を出さずに説明した。

妹は俺の一つ下、相談相手にはうってつけだろう。


「うーん、それは難しいね」

「そうなんだよ」

「で、なんでこんな事に巻き込まれてんの?」

「それは·····」


気分で引き受けたとか、グループLINEに誘ってくれるからとか。

理由が雑魚なんだよな。

てか、まだ誘ってもらってないわ。


「それは置いておいて、どうすればいい?」

「素直に言うしか無いんじゃないの」

「やっぱそうだよなー」


それが簡単に出来れば、こんなに悩んでいない訳であって。


「傷つけるのが怖いんだよ、あんなに頑張ってんのにさ」

「なに良い人ぶってんの? 自分に魅力が無いのが悪いんじゃん」

「そ、そうかも知んないけどさ·····」


確かにそうだけどさ、そうなんだけどさ·····。

正論は時に人を傷つけるんだよ。


「ありがとな、楽になった」

「ふーん、まぁ頑張んな」

「おう·····」


精神的に疲れて、そのまま眠ってしまった。


「·····行ってきます」


次の日の朝は、普段より1時間早く家をでた。

理由は家に誰か来ると困るからだ。


「よし、前方確認、左右OK」

「何してるの?」

「うぎぃ!」


念入りに確認したはずなのに、偶然小森が通りが買っていた。


「こんな朝早くにどしたんだ?」

「それは私のセリフだけど·····」

「が、学校に行こうと思ってな」

「早くない?」

「·····」


言えない、本当はサボろうとしてたなんて。

こいつ勘が鋭いな。


「小森こそ早くない?」

「私は部活で早く行こうと思って」

「何部?」

「写真」


写真部って、現在俺が仮入部している部じゃないか。

部員が一人だけとは聞いていたが、こいつだったのか。


「じゃあ部活頑張ってくれ」

「一緒に行こうよ」

「無理だよ、ちょっと駅の方に用があって」

「へー、サボり?」

「な!?」


一瞬で気づきやがった。

さすが写真部、洞察力は伊達じゃない。


「それじゃー、一緒にサボらない?」


俺は一呼吸置いて、こう答えた。


「賛成だ」

「決まりだね」

















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