第24話 初めてのデート
「じゃあどこ行く?」
「どこでも」
「エスコートしてよ、デートでしょ?」
これは傍から見ればカップルじゃね。
彼女が出来たことの無い自分からすれば、初めてのデートだ。
「鉄道博物館?」
「嫌だ、興味無い」
「国立の博物館行こうか、今ならミイラ展やってるんだよ」
「ミイラ怖い」
こいつがわがままなのか、俺にセンスが無いのか。
俺はセンスあるから、前者だろ。
「じゃあ、水族館は?」
「決定ね」
「最初からそう言えよ·····」
「デートって男子が決めるものでしょ? 女子は黙って着いていくの」
「めちゃ口出してたけどな」
俺たちは歩いて駅に向かい、電車に乗った。
初めてのおサボりでドキドキする。
「私も初めて」
「デート?」
「違うよ、学校をサボるの」
デートはあるのか·····。
そりゃそうだよな、高校生だし。
した事ないのが少数派か。
「魚の中で何が一番好き?」
「私は鮪、美味しいから」
「これから見に行くんだぞ·····」
こういう些細な会話が楽しい。
心が休まる。
「御影はさ、なんでサボろうと思ったの?」
「悩み事」
「私も一緒·····かな?」
「全く悪い奴だ」
「御影も同じでしょ」
顔を見合わせて笑いあった。
二人の間には暖かい空気が流れる。
「小森って意外と優しいよな」
「そ、そうかな?」
「そうだよ」
俺の悩みを深堀してこないし、できるだけ会話をしてくれる。
俺にはできない事だ。
「そ、そろそろ着くよ!」
少し空いた間を無くすように、小森が言った。
窓からは綺麗な海が見える。
「綺麗だなぁ」
「海?」
「え、うん」
小さい時から海は好きだ。
心が洗われるような感じがするからだ。
「みんな学校の時間だね」
通学中の高校生とすれ違う度に、何故か申し訳なくなる。
頑張ってくれよ。
「ふぅー、無事にチケット買えた·····」
「大変だったね」
制服で来てしまった為に、学校はサボったのかと聞かれた。
もちろん嘘をつき通した。
何かしらの記念日って言っとけばセーフ。
「うわぁー、大きい!」
「魚がたくさん」
中に入ると、すぐに巨大な水槽があった。
イワシの大群や鮪もいた。
「美味しそー」
「やめとけって」
水族館で一番言っちゃいけない言葉だよそれ。
魚も怯えてるよ。
「さすがに楽しいな」
2時間くらいかけ、一通り館内は全て回った。
深海魚も海月もいて、バラエティーに富んでいた。
「大っきいサメもいたし、ペンギンも」
「ペンギン可愛かったな」
赤ちゃんのペンギンが特に可愛かった。
小森が食欲を沸かす事も無く、平和だった。
「次はイルカショー観に行こうよ!」
「おう」
振り回されるのは悪くは無い。
むしろずっと続けば良いのにと思った。
「どうしたの?」
「いや、楽しいなって」
「私もだよ」
「なら良かった」
「早く行こ」
そう言うと彼女は、俺の手を繋いできた。
俺は顔を真っ赤にして、ぎゅっと強く握り返した。
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