第19話 エピローグ

あの日の放課後、私たちは初めて一緒に帰った。

たった30分が、尊くて美しかった。


「·····」

「·····」


もちろん会話は全然続かない。

居るよね、2人きりになると気まずい人。


「本当に今日はごめんなさい、迷惑をかけて」

「平気よ、気にしてないもの」


気にしていないのは本当だった。

一つ気がかりなのは御影ユウキの事だ。


「彼には本当に困ったわよ」


小倉にとってまだ転校して数日、ユウキとの接触が単純に多すぎる。


「でも2人って仲良いんじゃないですか?」

「そ、そんなことないわよ、どこを見てそう思ったの?」

「今までの2人の事を見て·····」

「な、何言ってるの!?」


小倉としては、ユウキの事は避けているつもりだった。

それが逆効果だったらしい。


「なんかツンデレみたいで·····」

「そ、そう」


そう言えば2人でいる所を見られていたのであった。

あの状況はそう思われても仕方がない。


「あの時は、彼が助けてくれたのよ」

「御影君が? 小倉さんのことを?」

「うん、私が変な人に絡まれたのよ」


デッドリーブラザーズだったかな?

趣味の悪い名前だったのでよく覚えている。

あの日のことを細かく説明した。


「あの人そんな勇気あったんですね」


小森から見れば、ただのヘタレで変態で変人だ。

それでいて優しい。

今日だって最後の最後まで私の名前を出さなかった。


「きっと無自覚ですよ、あの人は」

「そうね」


誰にでも優しさを分け与えられる、それは一種の才能である。

そんな御影君を私は羨ましく思ったりする。


「だってあの人私が家にまで行っても怒らなかったですもん」

「い、家に行ったの!?」


その日の帰りはずっと異性の怖さについて語られた。

一方その頃、ユウキは·····。


「御影、ちょっと話がある」

「お父さん、お母さん、今までありがとう」


怖いギャルに連行されていた。

















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る