第18話 名探偵御影ユウキ

考えろ俺。

起死回生の策を。

さっきのあれは時間稼ぎでしかない。


「最後に言い残した事があるなら言っておきなさい」


なんで小森は小倉の写真を欲しがった。

どうしてあの場に居たんだ?

何故だ。

これらの辻褄を合わせるとしたら、ひとつしかない。


「小森、お前は小倉の事が好きなんだな?」

「え、え!? そんなことないですぅ·····」

「つまらない事を言うのは辞めなさい、何か理由を話しなさい」


好きだと仮定して、振り返ってみる。

あの場所には、人は滅多に通らない。

それはあのブラザーズに聞いた。


「小森、あの写真を出してみろ」

「·····はい」

「な! こんな所撮られてたなんて」


偶然通りかかったとは思えない。

まるでずっと付けていたような·····。


「お前の写真ホルダを見せてみろ」

「い、嫌ですよ」

「小森さん、見せて」

「うぅ·····」


恥ずかしそうにスマホを差し出す。

そこに映っていたのは、小倉小倉小倉。


「すっげぇよ、お前立派なストーカーだ」


スクロールしていくと、入学からずっと小倉の写真が撮ってあった。


「お前が小倉の写真を欲しがった理由だ」


わざわざ俺に接近してまで、欲しがった理由。


「限界を感じたんだろ? 多分だけど」

「·····」

「自分一人では近づけない、だから隣の席の俺に頼った」


それは間違いだったけどな。

俺は嫌われてるし、嫌いだし。


「今日、小倉をここに呼び出した理由もだ」

「な、なんですか?」

「俺を一方的に悪者に仕立て上げ、距離を近づけようとした、違うか?」


完璧な推理だろ。

まぁ、色々穴はあるけどな。

ご愛嬌ということで。


「·····いけないんですか? 私は小倉さんの事が好きなんです」

「いやまぁ悪いとは言わないけどさ、人は選んだ方がいいぞ」

「どういうことよ」


言いたいのは関係の浅さだよね。

まだ転校してきて数日だぞ。


「これは私と小倉さんが出会う前の話です」

「あれ? 置いてけぼりの予感」


あの日、私は男の人にしつこく絡まれていました。


「あのー、やめて貰えませんかね」

「いいじゃん、ちょっとご飯食べようよ」


ちょっかいばかりかけてくる。

それに強く言えない私も私だ。

小さい頃から変わっていない。

そんな私に現れた正義のヒーロー。


「何してるの? 嫌がってるじゃない」

「この子の友達? 君も可愛いね」


引き寄せようとする手を振り払って彼女は、スマホを取り出した。


「何する気が? 嬢ちゃん」

「こうする気よ」


迷わずに110番した。


「あのー、変な人な絡まれてます、助けてください」

「こ、こいつ! 警察に通報しやがった」

「逃げろー!!」


こうして悪い人たちを追い払ってくれた。

すぐにどこかへ行ってしまって、名前を聞けなかったけど、この教室に入ってきた時にすぐに分かった。

この人だと。


「そんなこともあったわね」

「覚えといてやれよ、そこは」

「本当にすいませんでした」


小森は頭を下げた。

これには小倉も驚いたようで。


「小森さん? 別に何も怒ってないけど」

「ほ、本当ですか?」

「私が怒っているのはこのゴミクズ君だけよ」

「へ?」


かっこよく事件を解決して、はい終了。

御影君カッコイー、じゃなかったの?

飛び火って奴だこれ。


「今回の所は、許してあげてもいいけど·····」

「へ? マジ?」

「小森さんに免じてよ、好きだなんて初めて言われたから」


やっぱこいつは変なとこでピュアだ。

でもそこがいい所でもあるんじゃないか?


「それで·····、結果の方は」

「ごめんなさい、まずは友達から始めましょう」


こっちはいい関係を築けたらしい。


「それで·····、俺たちは?」

「今回の罰は無しで、あと·····」

「あと?」


この後の言葉に俺は心底驚いた。


「近づかないって言うの·····、なしでいいわよ」

「お、おう」


しまった、少しドキッとしてしまった。

こんな奴に。


「じゃあ俺は帰るわ」


俺は走って教室を出た。

あの時の小倉の顔が、何度も浮かんでは消えた。























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