第16話 冷戦状態

パシャパシャと、俺が写真を撮る音が響く。

クラスのガヤにより、気づく者は居ない。

なかなかいい写真が撮れている。

相変わらず笑顔は無い。


「小倉さんっていつも何してるの?」

「特に何も」

「はい」


そして会話も続かない。

小倉と2人で食事をとる凌太に、ギャルが寄ってくる。


「ちょっと凌太! あたしらとご飯食べようよー」

「ご、ごめん、今日は無理」

「えー、もしかして小倉ちゃんと付き合ってる感じ?」

「そ、そんな事ないけど·····」


グイグイ来るギャルに若干押されている。

なんだこいつ。

凌太のこと好きなのか?


「小倉ちゃんはどうなのー?」

「私は別に」

「別にじゃなくてさぁー、聞いてんの」


バチバチじゃないか。

でもこいつにそんな態度取ると、後が怖いぞー。


「うるさい」

「は?」

「少し黙ってて」


ほら怒った。

カーストトップのギャルに歯向かうと怖いぞ。

クラスが騒然とし始めた。


「はぁ? 私らに歯向かうとどうなるかわかってんの?」


周りの取り巻きたちと笑って言った。

新クラスそうそう物騒だ。


「どうなるんですか?」

「怖ーい事だよ」

「今のは脅迫ですね」

「え?」


来ました十八番。

それからクラスを見回る先生に向けて、こう言った。


「先生ー、私この人に怖いこと言われました」

「むっ、大丈夫か! 小倉」


目の色を変えて、先生は教室に入ってくる。

小倉は全ての経緯を簡潔に説明した。


「今の話は本当だな? 三橋」


初めてギャルの名前が出たな。

三橋は、不貞腐れながらも認めた。


「放課後、職員室に来い!」


この高校は他よりも厳しめで、すぐに反省文を書かされる。

この騒動の間にも、俺は写真を撮り続けた。

現在、48枚。


「ビミョー」


多分無理だな。

そう思い、俺は勝負に出た。


「なぁ小倉、写真でもどうだ?」


クラスが震撼した。

あの日の出来事はまだ色濃く残っている。


「私とあなたは二度と関わらないんじゃないんですか?」

「頼むよ、今は特別にさ」


手を合わせ、頼み込む。


「嫌です」

「撮ろうよ」

「嫌です」

「お願いします」


自然と俺は頭を下げていた。

かっこ悪い? 知ったことかと。


「·····はぁ、1枚だけですよ」

「よっしゃ」


俺たちは横に並んだ、

距離はだいぶ空いているがまぁいい。

カメラマンはもちろん凌太。


「行くぞ、はいチーズ」


パシャパシャパシャパシャ。


「撮りすぎじゃないですか?」

「そ、そう?」

「ごめん、ユウキが目瞑ってたわ」

「はぁ」


すっごい嫌な顔で睨まれた。

仕方がないので撮りなおす。


「はいチーズ」


パシャパシャパシャパシャ。

圧巻の連写。


「はい、おっけー」

「あざーした」

「もう二度と話しかけ来ないでください」


はぁ、そう言えばアレ以来初めて喋ったな。

の割にはよく撮ってくれたな。

結構稼ぐことができ、65枚。


「今に見てろよ·····、小森」


クラスの端っこで、ニヤニヤと笑う小森に向けて、呟いた。





















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