アナンの冒険
@summermandarin
第1話 アナンの出会い
僕の名前はアナン。僕のふるさとは、アフリカのエチオピア。
最近、おかあさんのふるさとのアメリカに引っ越してきた。
いつのまにか、僕の目覚ましだった小鳥の声がトラックのクラクションの音に変わっていた。
新しい学校、新しい友達、新しい先生
1週間がたった今日、僕は小学校をさぼってしまった。
なんでかって?僕は今の学校になじめていないから。
みんな、ものめずらしそうに僕を見るし、ひそひそ声も気になってしまう。
友達がほしいけど肌の色が違うせいで声をかける勇気がない。
…どうしたら友達ができるのかな?
そんなことをぼーっと考えながら公園のベンチに座って空をながめていた。しばらくすると空がだんだん濡れた鳥のように暗くなってきて、雨がポツポツと僕の顔を濡らしてきた。
いそいでリュックを背負って大きな樹の下へ駆け込んで、一息つく。服はそんなに濡れなかったけど、頭がシャワーを浴びたあとのようにびしょびしょだ。すると、おなじ樹の下で雨宿りをしていた女の人がタオルを差し出してきた。
「大丈夫?よかったらこのタオルで拭いて」
僕はとっさのことで何も答えることができなかった。
彼女には、オレンジのガーベラのように美しい髪色と暖かさがあった。
女の人はあわてたように
「驚かせてしまってごめんね。私の名前はニナ」
その時、僕達2人の間にこれまで感じたことのないような和やかな風がふいたような気がした。
「あなたの名前は?」
「僕の名前はアナン。近くの学校に通っているんだ」
僕はタオルを受け取って答えた。
ニナは、学校はどうしたの、と聞いたので僕は、クラスになじめないから行きたくないんだ、と答えた。
「そんなに重く考えなくていいのよ。みんな転校してきてすぐはクラスになじめないものなの、わたしだって小さい頃に転校したときはすぐに友達なんてできなかったわ」
ニナは優しく微笑んで、ソリアのチョコレートをくれた。
それからニナと僕はたくさんの話をした。
家族や好きなこと、なやみごとまで...
そのなかで僕はニナに、ニナの大好きなものはなに?と聞くと
「わたしの大好きなものはね...」
と目を輝かせて話し始めた。僕はその時のニナの目が黒真珠のように美しくて、また、目の前の景色が眩しいくらいに輝いて見えた。それは、アメリカに来てはじめて友達ができたからだろう。
しばらくすると雨が上がった。
そろそろ帰る時間。僕はもっとニナと話したかったけどニナも家に帰らないといけないかったから、絶対にまた会ってもっといっぱい話そうね、と言って笑顔で別れた。僕たちはお互いが見えなくなるまで両手で大きく手を振っていた。
家に帰るまでの空はうすい紫色に変わっていった。帰り道はいつもより足が軽くて、長く感じなかった。
「明日は頑張って学校に行こう!」
僕はそう心に決めた。
...それから数日たっても学校で友達はできなかった。学校からの帰り道、硬そうなコンクリートの地面を見つめながらトボトボと歩いていた。すると、どこからか甘い匂いがしてきた。顔を上げると目の前にソリアのお店があり、そこにニューヨーク限定のチェリー味のチョコレートを見つけた。そこで僕はふとニナと一緒にこのチョコレートを食べたいなぁ。と思いながら空を見上げた。そこにはニナの髪色のようなオレンジ色の空が広がっていて、僕はニナに無性に会いたくなった。
気がつくとニナと会った、あの樹の近くに足が向いていた。そこで僕は見覚えのあるペンダントを見つけた。中に写真のはいっているペンダントだ。その写真にはニナとニナのおかあさんらしき人が笑顔で写っていた。
たしかこれは... 僕は大好きなものの話をしているときのニナの言葉を思い出した。
「私の大好きなものはね、家族なの。父と兄の3人よ。母は私が小学生のときに病気でなくなってしまったわ。このペンダントは母の形見よこの世界で一番大切な宝物よ。」
そういって肌身離さず持っているのだと、僕に告げたのだ
僕は、すぐにニナに届けないと!と思ったが、ニナが今どこにいるのかどこから来たのか、連絡先でさえも知らない。アナンにはニナを探す方法もないのだ。
さてさて、友達思いのアナンはどうやってニナをさがすのでしょう。
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