承② 邪魔物の大群VSモンブラン騎士団

 私たちが街の外壁に駆けつけると、閉ざされた門の向こうで何かがぶつかってくる音が響いた。


 ガリガリッ……ドシっ、ドシン!!


「うわああ!! やめろ、来るなぁあああっ!!」


 外壁の上で衛兵が弓を放っている。急いで塔をのぼり、外壁から街の外を見下ろす。


「冗談でしょ……!」


 街を囲むように、見たこともない数の邪魔物の大群が押し寄せてきていた。うじゃうじゃと黒い群れをなして門に体当たりし、ツメを使って器用にレンガの壁をはい上がろうとしているものもいる。


 あまりの光景にさすがの仲間たちものけぞった。衛兵は弓を使って遠くから攻撃できるけど、騎士の私たちにはそれができない。


 中には魔法を使える愛されものもいるにはいる。でも、魔術師になれるほど強い魔法系スキルは持っていない。まして、この大群を相手には弓でも魔法でもあまり効果は……。


「ブラン隊長、この音は――!」


 ミシ、ミシ……ミシッ。


 言われなくてもわかる。門が限界だと泣いている。


「ここからじゃ攻撃が届かない! みんな、行くよ!!」


「……」


 剣を抜くも返事がない。仲間を見ると、みんな固まってしまっている。大群を前に、剣を持つ手を震わせていた。


 べき、ベコ、パキッ。


「ダメだ、もう門が――! うわあああーッ!!」


 門にあいた穴から魔人が手を入れ、中の衛兵を引っぱった。それを見ていた街の人たちが青ざめる。


 私は飛びだした。外壁を蹴り、空中で回転して勢いをつける。聖剣を下に向け、重力といっしょに邪魔物の1匹へ一撃をお見舞いした。


「ギャォオ!!」


 悲鳴をあげて、邪魔物が浄化されていく。魔王に力を与えられた魔物や魔人たちが、群れに飛びこんだ私をいっせいに見た。


「ぶ、ブラン隊長……!」


 こわくないわけじゃない。でも、この中にあるものに手を出されるのが私はもっとこわい。


「――私はブラン。モンブラン騎士団のブランです。私たち愛されものは、愛された分を返す必要があります。あなたたち邪魔物に愛するものを壊されるのは……納得できません!!」


 体をひねり、回転斬りを群れにくらわせる。邪魔物が吹き飛んで、黒い海に穴があく。もとの緑の大地が見えて、そこに仲間たちが飛びこんできた。


「俺たちも隊長に続け!! 愛されものの義務を果たすんだ!!」


 仲間の加勢で邪魔物の海がどんどん散らばっていく。騎士団の攻撃を受けては倒れ、数が減る。それでもまだまだ圧倒的だ。


 大丈夫、このまま戦い続ければいつかは――!


「――ッ!?」


 ぞわっ、と私の危機感が強く反応する。嫌な感覚を追って後ろをふり返る。

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