現代小話(ショートショート)集
黒井真(くろいまこと)
カクヨム的ショートショート~営業
俺は作家だ。しかし、デビューはまだしていない。小説投稿サイト『カクヨム』で執筆を続けてきた、売れない作家だ。
しかし、俺は自分の書いたものに絶対の自信がある。筆も早い方だ。ジャンルだって、異世界ファンタジーからミステリ、ラブコメまで何だって書く。幅広い読者を獲得するためだ。
しかし、PVが伸びない。
これは宣伝が足りないせいだ、と気づいた俺は、ほかの書き手のフォローをしまくり、作品をフォローしまくり、ほかの作品に応援マークを残しまくり、★をつけまくり、徹底的に俺自身の存在をアピールした。
これで俺の作品に気づく人が増えて、PVも伸びて、ネット上でバズり、作家としてデビューできるはずだ――と、そう考えた。
しかし、それでも思うような結果は出なかった。どのレーベル担当者からも声がかからない。ウンともスンとも言ってこない。
「君の作品は素晴らしい! ぜひ我がレーベルから書籍化を!」というメールが届いてもいいはずなのに。
応募したコンテストにはことごとく落ちた。自作の中でも、特別に出来の良いものを送ったのに。
そして、致命的なのは自作のPV、応援マーク、★は多少増えてはいるが、いずれも俺が応援マークや★を残した人で、それ以外の人からの★が一向に来ないのだ。つまり、宣伝の効果があがっていないのだ。
家に引きこもって何年か集中して書いてきたが、もう限界だ。貯金も底をついた。俺はとうとう転職を決意した。
俺は、とある会社の営業マン募集という求人に応募してみた。面接では、正直に学校を卒業した後ずっと作家になろうと思って努力を続けてきたこと、自作をアピールし続けてきたことを話し、いくつかの自信作も持参して見せた。
数日後、「ぜひともわが社へ」とという採用の通知を受け取った。
俺は思った。
これは、面接の担当者が、俺の小説から、商品を売るのに必要なキャッチコピーを書く力を見抜いたからに違いない!
しかし、人事担当者は言った。
「いや、これだけ面白くないものを売りこみ続けた
わが社は、営業マンの根性で業界での地位を確立してきた。
他社の口さがない連中は、やれ『体育系ブラック企業』だの、『根性論ブラック企業』だの言うが、現実に結果を残している! さあ、我々と一緒に夢を追おうじゃあないか!」
【あとがき】
カクヨムで書いていると、「おや?」って感じのことがありますよね。そういう時に思いつきました。
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