不思議の国のハートの女王 世界の強制力で毒吐きまくり!? おかげで破滅ルートに入りそう……
長月 遥/ビーズログ文庫
プロローグ
――わたしは、未来に起こることが何となく分かった。
子どもの
他の分野においても
しかし現実はそんなにポコポコ天才生まない。
「わたし、コレ、知ってた……!」
そりゃ飲み込み速いし、まだ決まってない政策だって見通せるはずだよ。
だって、知識を持ってたんだから!
古典的表現に分類される、黒バックにビシィ! って
体験してみないと分からないことが、世の中って
――じゃなくて。
目の前に映るのは、燃えるような赤い
自分で美少女言うなって? いやいや、客観的な事実ですよ。公式サイトのキャラ
まあとにかく、わたしは鏡に映る
うん、わたしの名前もエリノア・ハートです。
今この
ゲームのエリノアにそっくり……、っていうか、思い返せば設定から何から同じだ。まるでゲームの世界に入り込んだみたいに。
いやいや、まさかでしょう。だってそれ、どういう
でも、今のわたしはどう見てもエリノア・ハートだ。これまでは
お父様とお母様の間に子どもはわたし一人だから、いずれ女王になるのはほぼ決定
予想外のことに混乱してちょっと忘れかけてたけど、思考が現実に
お父様とお母様は、領内視察に向かう
でもそれとは別に、国には責任者が必要だ。国王夫妻不在のまま、王座を
わたしは今日、仮に王座を預かるのだと、国民に向けて
ゲームの主人公はアリスだから、エリノアの役どころはゲーム開始時から悪役女王だった。
この世界で生きてきて十七年。わたしはゲームのエリノアほど
ちょっと思い出した。わたし前世日本人だったわ。エンタメスキーだった感覚もあるけど、その頃のことはよく思い出せない。まあ、別人として生まれてほぼほぼ忘れて生きてくればね。ずいぶん昔のことになるよね。
「ううん……。でもこの記憶、正しいのかなあ」
乙女ゲーム『
ハートの国編、スペードの国編、ダイヤの国編、クローバーの国編で、
さすがに一本一本はやや低めの値段設定だったけど、うーん。やっぱり総合的にやや高かった気がする。シナリオ量はボリューミーだったから、そこまで不満ってほどではないけれど。
エリノアはハートの国編の悪役。攻略キャラは
アプリに
バグを修正するだけのタイトルアプデにまで登録が必要とか、どういうこと? 不具合品出しといてさらにユーザーに手間かけろってか。技術的には登録なんかしなくたってアプデできるのに、登録させようとしてくるのが余計に
結果、バグ確認してから買うのが常になった。アプデしないと満足に遊べないゲームじゃ楽しめないのは分かってるから、その時点で購入リストから外れる。
その点、ネット
まあそんなわけでわたしは『エリノア』を知ってる。だけど今のわたしはゲームの『エリノア』とは違う。彼女みたいな
……気のせい、なのかなあ。全部。記憶が正しいなんて証明できないもんね。
考えながらじっと鏡を見ていると、
「エリノア様、そろそろお時間です」
「あ」
そうだった。気持ちを落ち着けたいからって、無理に一人にさせてもらってたんだった。
……あれ? もしかしてこれって我がまま? いやいや、まだ
「今行くわ」
鏡から
わたしを呼びに来たのは
ニーナはきょろきょろ、と周囲を見回して人の気配がないのを確認してから。
「
いつもの口調で心配そうに聞いてきた。
身分を軽視できるほど、わたしもニーナももう子どもじゃない。でも、個人としてはやっぱり別。
「かなりね」
だからわたしも、正直に答えた。
「当然よね。丸きり緊張してなかったら、それはそれで嫌な国主だわ」
自分が言われる側になるとビクッてするけど、気持ちは分かる。重責であることを理解しないでヘラヘラしてる政治家って不信しかないよね。
「でも不安そうな顔してちゃ
「……うん。大丈夫」
席を預かるのがわたしで大丈夫って、思ってもらわなきゃいけない。
「じゃあ、行きましょう。――女王陛下」
「ええ」
ざっくりとした口調を、
王族って言っても人間だもの。それらしく見えるよう努力してるだけで、中身は変わらないのよ。子どもの頃に見た十七
でも、やらなきゃいけないことの分別は付けられるようにならなきゃね。
ニーナを従え、わたしはバルコニーへと向かう。
その途中でふと
……こんな所に、こんな鏡あったっけ?
違和感は覚えたが、わたしは内装を細かくチェックするような立場にない。知らないうちに変わっててもおかしくはないのだ。きっとつい最近手配されたものなんだろう。
丁度わたしが映り込んだとき、足元に
レースと
ドレスってさ、見てる分にはいいけど身に着けると辛いよね。……オシャレは全体的にそうなんだけど。機能性と
ともあれ、何事もなくバルコニーに
思ってたよりずっと人が多い。これはきっと、いきなりお父様とお母様がいなくなったことへの不安の表れだ。
ここは何としても、それを
大丈夫大丈夫。落ち着けー。まずは第一声。
「炎の
…………うん?
いま、なんか、おかしかったぞ?
き、緊張してるのかな?
気を取り直して、頭の中できっちり整理し復唱してから口を開く。しかし。
「先の支配者であった国王夫妻は消えた。しかし案ずるな、
ま……、待って待って!? 口がおかしい!!
言おうとした内容的にはギリギリ
「これよりは妾が貴様らの
違うそうじゃない。わたしが預かる席は仮にだから――
「貴様ら国民は命も
たとえ仮にだろうと国を預かる以上は、国に、民に責任を持つ。そんな決意を
口が――口がいうことを
庭に集まった人々はすっかり静まり返っている。そんな中、内心の
「女王たる妾が法であり、正義である。逆らう者は心せよ。妾にたてつく者は、皆、
これ、『エリノア』だ――!!
ハートの国編の、自分勝手で冷血で
なんで? どうして?
まさか本当に――ゲーム強制力ってやつですか!?
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