百合娘

@tunetika

第1話

第一回

「吉沢、今夜は遅いじゃないか」

「ちょっとバイクの調子が悪くってな」

革ジャンに身を固めた美青年が入って来た。

ここは六本木でもエネルギーを持てあましている若者が集うクラブである。

 良識のある大人が来たら耳をふさぎたくなるような大音響のクラブミュージックが鳴り響いている。

たばこの煙が地下室であることもあり、くすぶっている。

「おい、やらせろよ」

吉沢はダーツをやっている若者のそばに行くと、そのダーツを始めた。男の腕はなかなかだった。

 そこへ仲間うちからお塩と呼ばれる男がやってきた。

「吉沢、バイクの腕はお前の方が上かも知れないけど、ダーツの方は俺の方が上だぜ」

「言うな、お塩、じゃあ、勝負だ。でもなあ、ただ勝負するだけじゃおもしろくないぜ。そうだ。

お前、安倍なつみのマンションにプレステやりに行ったんだろう。俺が勝ったら、

なつみを紹介してくれよ。俺もプレステやりに行くから」

「へん、なつみは俺のものだぜ。でも、プレステやるぐらいだったらいいか。じゃあ、俺から行くぜ」

お塩はさきにダーツの矢を投げた。見事、真ん中に命中した。

「今度は吉沢、お前の番だぜ」

「ちょっと、待った」

吉沢と呼ばれる美青年はさっきから気になることがあったのである。

この不良たちがたむろしているクラブの中で似つかわしくないものを見たのであった。

上品なこの場にはふさわしくないと思えるような若奥様風な女がこのクラブの片隅に座っている。

興味本位からこの場所に入って来たのだろうか。似つかわしくない。

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