第18話 二人でお出かけ
二人が遊びに行った翌日、なぜか今日も朝ごはんは俺が作っている。
まぁ、あの二人が仲良くなれたのはいいことだ。
だが、二人で風呂に入り、二人で一緒に寝て、二人で寝過ごす。
これはこのままでいいのか?
「お、今朝の味噌汁は中々いい味が……」
陽菜から料理を少しだけ教わったけど、思ったよりもいけるかもしれない。
このままいけば本当に完全自炊生活ができてしまう……。
朝食も皆でとり、食卓を囲う。
陽菜が来てから何回目だろうか。
「じゃ、いってきまーす。夕飯までには帰るから」
今日、葵は友達と出かける予定があるらしく、一日外に出るらしい。
俺もそろそろ学校の準備を始めようかと思ったが、なぜか葵からチケットをもらってしまった。
葵から渡された映画のチケット。
葵が陽菜と一緒に出掛けたときに映画の話になり、この映画を見ようと話がまとまったらしい。
男女で行くとカップル割となり、半額で見ることができる。
恋愛映画なので、葵はどうやら興味がないそうだ。
陽菜は以前から気になっていたらしく、俺と一緒でもいいから見たいと。
まぁ、俺もあんまり興味はないけど、せっかくだし見に行ってみることにした。
「卓也さん、映画まで時間がありますが、どうしますか?」
朝一で葵を見送り、リビングで陽菜と二人きり。
初日のようにお互いにぎこちない態度はある程度緩和されている。
「そうだな、せっかくだしどこかでランチでも食べてから行くか」
「わかりました」
「何か食べたいものとか、行きたいところはあるか?」
俺は特にない。
大体外に出るといつも葵の後を追いかけている。
というより、あいつが突っ走っていつも見失う。
全く、こっちの事なんて何も考えていないんだから。
「そうですね……。葵ちゃんに教えてもらったパスタのお店に行ってみたいです」
「パスタか、いいね。じゃぁお昼はそこにしようか。他には?」
しばらく考え込んでいる陽菜。
何を考えているのか、当ててみよう。
「服、見に行くか?」
少しだけ微笑む陽菜。
どうやら当たったらしい。
「いいのですか?」
「いいよ別に。葵の事だから、この店おすすめなの! とか言っている店があるんだろ?」
「葵ちゃんの事、よくわかっているんですね」
「まーな。あいつとも長い付き合いだしな。よし、服見て、ご飯食べて、映画に行きますか」
「はいっ」
葵から聞いたが陽菜は友達が少なかったらしい。
しかもこのタイミングで引っ越したなら、なおさら友人は近くにいないだろう。
高校に入ったら、嫌でも人とかかわっていくだろう。
その前に、少しでも免疫をつけておかないとな。
「どれ、じゃぁ出かける用意でもするか」
「私も着替えてきますね」
お互いに部屋着のままなので、外着に着替える。
とりあえず俺は適当な格好でいいか。
良く着るシャツにボトム。適当なジャケットを羽織り終了。
髪も特に何もしない。男の準備は早いのだ。
そして、数十分後。
いまだに陽菜は戻ってこない、一体何をしているのか……。
――コンコン
「陽菜? 準備は終わったか?」
返事がない。
どうしたんだろう?
もしかして倒れている?
「えっと、もう少しで行きます」
返事があった。
多分服でも選んでいるのだろう。
女の子だし、時間がかかってもしょうがない。
しばらくし、目の前に現れたのは多分陽菜だ。
長い髪を帽子に入れ、黒いボトムに白いシャツ。
なんともまぁ、女の子っぽくない服装だ。
「準備は終わりか?」
「はい、私はこれで大丈夫です」
声に覇気がない。
俺に気を使っているのか?
家を出て駅に向かって二人で歩く。
この微妙な距離が何とも言えない。
遠からず、近からず。
「なんでそんなに離れて歩くんだ?」
「え? でも……」
話したくても少し遠い。
「せっかくなんだし、話しながらいこうぜ。ほら」
陽菜の手首を取り、少しだけ俺との距離を縮める。
「あっ……」
「この位の距離の方が声が届くだろ」
「そう、ですね」
下を向きながら歩く陽菜は何を考えているのだろうか。
少し強引だったかな……。
駅までの短い距離、少しだけ陽菜と話をする。
葵と出かけてどこに行ったのか、どんな話をしたのか。
しばらくすると、下をずっと向いていた陽菜も俺を見ながら話をするようになった。
時たま見せる笑顔は、とても女の子らしく、瞳が輝いている。
本当は話をするのが好きなんだろうな、と勝手に勘ぐってしまう。
「そっか、葵と仲良くしてくれて嬉しいよ。これからも、よろしくな」
「もちろんですよ。その、私も卓也さんと仲良くなれればと……」
「もちろん。俺も陽菜と仲良くしていきたいよ」
笑顔で返事をする陽菜。
きっと、俺達は大丈夫だ。この先も上手くやっていける気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます