第11話 乙女ゲーム的展開ってヤツ?

車の中での、イケメンからの羞恥的攻撃にやられたあたしは、踊る前から疲れ果てていた。 え、もう踊る気力なんてないんですが?もう帰ってもいいっすかね?と言うわけにもいかず、高橋亮太と連れ立ってディスコに入った。


ちょっと体勢を整える為、彼と分かれて化粧室に入ると背後から声をかけられた。


「ーーーーー アナタ?豊田って人」

「? はい、豊田ですけど…?」


振り向くと、そこには気の強そうな美人が立っていた。 あ、この人見たことあるぞ… 確か…


「どうやって取り入ったのか知らないけど、司は私のだから」

「えっ…?ごめんなさい、司さんて西園寺さんの事ですか?」

「はあ?白々しい…!そうやってとぼけていられるのも今のうちよ。アナタに司は絶対に渡さないから!」


この思い込みの激しさ… 間違いない。


二条麗子にじょうれいこ。華族の末裔で、西園寺司の幼馴染。そして、あの乙女ゲームの悪役令嬢的ポジションの人だ。 あ、言いたいこと言ったら出て行っちゃった。 


確か二条麗子と出会って直ぐにイベントと言うか、ミニゲームがあったはず。 それは確かーーーーーーー





「こんな事になって、本当にすまない…」

「いっ…いえ、元々踊りにきたんだし大丈夫です…」


あたしは今、目の前の王子…もとい西園寺司に頭を下げられている。 なんでこんな事になっているかと言うと、それは彼の後ろで腕を組み、あたしを睨みつけている二条麗子が原因である。 そして、それは乙女ゲームにあったミニゲームでもあった。


ーーーーーダンスバトルーーーーー


オーディエンスが取り囲む中、何曲か踊ってオーディエンス全体に投票してもらい、得点の多い方が勝ち。

確か乙女ゲーの方では麗子と競って獲得した得点は、そのまま西園寺司の好感度として加算されたハズ。


そしてリアルは、勝った方が西園寺司とチークタイムに踊る権利が得られると言うもの。


正直あたしはどっちでもいいって言うかー、むしろ面倒ごとのフラグになりかねないから遠慮したいわ。したいんだけど、断ればまたそれも面倒ごとになりそうって言うね。もう、どうせいっちゅーねん。


はー、まあやんないわけにいかないよね。何せ観衆は今大盛り上がりしてるし… このパリピどもがっ!



『Lady's and gentleman!everybody!コ・ン・バ・ン・ハ! 今夜はここ◯◯◯でなーんと!ダンスバトルがー勃発!美しき二人のレディが火花を散らして対決するよ!今宵のダンスクイーンはどっちだ?!ミナサーンDON’T MISS IT!!』



DJの掛け声と共にあたしと二条麗子が中央へ移動する。 


移動途中に高橋亮太が近づいてきて、耳元でささやいた。近い近い!それにくすぐったい!


「僕と司が君の事を話している時に、タイミング悪く麗子が聞いていて、それで頭に血が昇っちゃったみたいなんだ。ごめん。向こうで応援しているから、がんばって芹香」


うーん、いいんだけど… すっかり下の名前を呼び捨てにされるて…一体、どうしてこうなった…

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