第7話 過去③
「ニャーーーーーーーーー!!!!」
モモは苦しそうに呻き、小さな身体から血を流しバタバタと動く。
そして、しばらく経つと、動きが弱くなり、
ぐったりし始めた。
私は小さなモモを手さげ鞄の中に乱暴にいれ、
ハサミをスクールバックの中に入れ、そのままバックを持ち、床についてしまった血を拭き、一旦家の外へ出た。適当に、近くのカフェに入り、何もなかったかのように、今日学校で出された課題を終え、家に帰ると母が青ざめた顔をして私の方に近寄ってきた。
「モモ...知らない...?」
声が震えている。こんなに動揺した彼女をみるのは初めてだった。
「知らないけど...え?モモがどうしたの?」
平然とそう答えると母は泣きそうな顔をして
「私が買い物に出かけている間にどこかに行ってしまったの...」と答えた。
私は母を優しく抱きしめて、耳元で「私も一緒に探すからとりあえず泣かないで」と優しく背中をさする。
「ありがとう...」
そう弱々しい声で感謝を伝えられる。今まで生きてきて初めての経験だった。
とりあえず、部屋に荷物を置いてくると言い、
私は手さげ袋に入れたモモを出す。
部屋のベットの下に置いてあった小さな段ボールに移し替える時、まだモモは少し温かった。ぐったりしていて、今ならまだ助けられるかもしれない。病院に運べば...でも、私の中ではモモの命を救う前にどうしても、もっと苦痛に歪むあの人の表情が見たかった。モモに罪は何もない。でも気に入らない。いきなりきて愛情を注がれているこの子のことも。私は段ボールの蓋を閉め、その中に血がべったりついたハサミも入れた。明日、モモをどこかに埋めに行こう。
気持ちを落ち着かせる為に、私は机の引き出しの中に入れてあるピンク色の日記を取り出し、今日の出来事を描き始めた。
その途中で部屋の向こうから今度は父の声が聞こえた。どうやら仕事から帰宅してきたらしい。また低い怒鳴り声が響く。窓を開けっぱなしにして外出した母をかなり怒っているようだ。我が家はお世辞にも広くはないが、庭付きの一軒家である。
両親は空いていた窓からモモが外に出てしまい、どこかに行ってしまったと考えているようだ。
部屋から出て、2人の顔を見ると、2人とも涙目だった。相当、モモが愛されていたということだ。実の娘より、子猫にそこまで愛着を持っているとは...悲しい気持ちもあった。
でも.....
それ以上に私は何か満たされる気持ちがあった。
初めて、私は母をそして父を殺せた気がした....。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます