黒い夢
美咲
第1話 プロポーズ
「結婚しよう」
彼の口からでたその言葉に
私は一瞬思考が停止した。
今日は彼と付き合って3年目の記念日だ。
私達は彼が予約してくれたイタリアンレストランで食事をしていた。
思い返せば、今日の彼は少し変だった。
会った時からそわそわしていたし、
いつもは凄いお喋りなのに口少なで
どこか上の空だったから。
考えれば考える程、点と点が繋がる。
普段のデートでは、適当に空いてるお店に入ったりするけど、この日の為に彼はきっと色々考えて
お洒落なお店を選んでくれたのだろう。着慣れないスーツなんてきて珍しいと思ったのだ。前日の夜に、メールで『明日はなるべくお洒落な格好で来て欲しい』と言われた時点で気付くべきだったのかもしれない。2人が付き合った大切な日だから毎年なにかしらのお祝いはしていたけど、まさかプロポーズされるなんて夢みたいだ。
窓の向こうには一面の夜景が広がっている。
ふと、彼の顔を改めて見ると、頬を赤らめてとても愛らしい。目が少し細く、つり目で高い鼻、
すっきりとしたフェイスラインの顔立ちの彼は
出会った当初は、まるで狐さんみたいで可愛いなぁと思ったものだ。
「こ、こんな私で良ければ...!宜しくお願いします」
私の返事は最初から決まっていたけれど
なんだか、照れ臭くて噛んでしまった。
「ありがとう!嬉しいよ」
満面の笑みでそう言われると、付き合いが長くてもやっぱり照れくさい。
「あと、これ。」そういうと、彼はカバンの中から小さな箱を取り出した。
そして、それを私の目の前で開けると
そこには指輪が入っていた。
「左手だして?」彼に言われて私はそっと
左手を出す。薬指に指輪がはまった時は本当に
私は結婚するのだと感じた。
「これからは、一緒に人生を歩んでいこうね。
僕は君の全てを受け止めるから。」
全てを受け入れる...?
本当に...?
なんて、思いながらも「はい。」とだけ笑みを浮かべて返事をし、また私達は止まっていた手を動かし、また食事を楽しみはじめた。
赤いワインにミートスパッゲティ...。
グラスを手に持ち私は一瞬思いついてしまったことを必死にかき消した。
私は普通に...!
普通の女の子として生きていくと
決めたのだから...!
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