神ヨ私ヨ万物ヨ

N白 音々

日記

初日

生物は、薄皮をもっていて、本体と見分けがつかないらしい

私にはそれの見分けがついた


ただ私は生まれついて薄皮の無い醜い人間だった


しかし、だからこそ薄皮の無い部分に惹かれていた。それへの情熱で言えば他に勝る者はいないだろう


あれは悪くなればなるほど赤みを帯びてゆき、最後には白くなる、皮は白いので白から赤へ、赤から白へとぐるりと回るのだ。




何月二日目

街で薄皮がない最悪な者を見た。白く美しいと言われていた

私にはそうとは感じられない、皆薄皮だと思っている物だろう物が本体とは思っていないのだ

皆が触れてゆくと、笑顔になっているが本体はきっと脆いだろう、やはり薄皮すら無く、本体も痩せこけていて白く透き通ってすら見える

酷く弱く見えて、可哀想な気分になるのが嫌で私はあの人を見る事が苦手だった



は日目

朝が来た

太陽が眼に刺さる様な日だった


なんだか、うるさいまた何かが起きてるのか?


朝は皮の無い皮膚から体液が漏れ出て乾燥した粉が身体中に付いている

風呂で流さなくてはいけない


ああ、まただうるさい


どうにも、最近うるさいと言う事だけは分かるものの、何を言われているのか、音があるのか無いのかすら分からない

多分薄皮がない事と関係しているのかもしれない


医者へ行って相談するも良いが、適当で、誤魔化した事ばかりしか言わない

そんなのだから面の皮が厚くなっているんだ

きっと普通の人なら、それを見て素晴らしい!頼れる!などと思うのだろう…


そう考えると世間が、外が、気味の悪い物に満たされている様な気分がした。




三日目

知人からメールが来た

良い物があると


それは、劇薬で、本体と薄皮を見分けるための薬らしい


まだ生きている者に飲ませると、本体から微量だが毒が漏れ出して、薄皮の間に溜まり、見分けられると言う物らしい

だが、大量に飲み、この毒が薄皮との間に留まり続けていると、排出した毒が逆流を起こして死に至る可能性がある…らしい


だが、私には薄皮が無い

だから私に良い物なのだろうか


「いやいや、これの服用時の一番の特徴は、新しい物が、世界が、見えるらしい」


全く説明としてなってはいなかった

彼にも毒が回っているのだろうか?


そもそも薄皮と本体を見分けられる私には彼に毒が回っているかどうかは判断ができなかった


待て、それよりもおかしい、何故だ

私には音は聞こえない、認識が出来ない筈だ

自分はどうやって分かったんだ?


「分かった?」


ああ、そうか、こいつ何処かで私に毒でも入れたんだろう





5日目

朝が来た

うるさい音が聞こえてきた


鏡から聞こえていたのか、この音は


覗き込むと鏡の中の私は「私がお前の事を死ねと言っていた」と話していた

黙れ

それは毎朝、何度も何度も、聞いてやった話だろう、何故満足しない?」だからそんな事を言われるのだ」


お前も私も


また死ねと言われた、何回目?何故?嫌だ、嫌、辛い、やめて」だのと言っていた。





後日後目

わーい、また伝票だ、いや、電話かな?手紙だよ!ちがった、あれは電波の筈だ。

急いで電波塔を建てる

塔なんて言っててもただの鉄の棒だ


知人からのメッセージが来ない

通信を忘れていたらからかな

どうしたのだろう

何か言った方が良かったかな

知人からのメッセージが来ない

何かまた忘れているらしい

私、私は何か、何をやって無かっただろうか…

何をしてしまったんだろうか

知人からのメッセージが来ない




 日目

カーテンが、明るくて私を誘っていた

柔らかい日差しを広げて、外を見た

こんな、ただの、太陽の光を反射しているだけの外に、物に、なんの価値があるのだろう


白く、身体の細い者が歩いていた

美しく、肌は透き通っていて、弱弱しくて何かを私が代わってやりたい様な感覚を覚えた

あの人は誰だろう




4月8日晴れ

朝が来た

鏡色の鮮やかな鳥が鳴いていた

誰の真似をしているのかな?私?

鳥型にくり抜かれた私が反転して私を睨み付けている様な、悲しそうな目をしていた。


もう一つ、同じ私は自身の手足だけしか見る事が出来なくなっていた。



明後日目

朝、朝、朝

夜になってしまった

ガラスは鏡面、後ろは夕焼け

遠くから自責の音が聞こえ続けていた




メモ

熊に食べられる

一度は助けられて誰か誰かに ひとりでいたいからとか言い訳してたら汲み取ってくれる奴で、忘れた

そいつと木に生える綿毛 まるい芝生の生えた所で

記念撮影する人達 これはあなたの弟子よとぬいぐるみに言っていた

一度殺した熊、あいつが遊んで殺した

腐らないんだからおかしい

生き返った?何処かへ消えていた

高い建物全て自分が住んでいる

ダミーに騙されてくれ

熊は反対へ行った

怖くて塀を登りながら直線状に熊から逃げた

登校道路、雨は渋滞

子供が熊に襲われている

逃げると畑の様な形をした施設で熊狩りの奴らが何が腰を曲げて地面に向かい練習をしてた



 月11日

どこかでみたような平凡な顔の医者が既視感を連れてやって来た

手に持った紙とタブレットに何かを書いている。時折私をじっと見ては突然パッと書き出したりする。この医者は本物なのだろうか?

医者という者は異常者と多く関わる為に、正常が何か分からなくなってしまうと聞いた事がある

薬を出された、元に戻れる物らしい

その場でひとつ飲まされたが酷く苦かった事を覚えている

元に戻るのが何かは分からないがこれは飲みたくは無いな…




012日目

手を叩くんじゃない可哀想だ

何故手を叩くのが称賛なのか、手が痛いだろう、ただただうるさい

しかも皆リズムが合っても無いときた

私をバカにしているのだろうか





 月 日 曜日 時 分

知人が亡くなった

話さなくなってしまうとまるでぬいぐるみか、人形の様だった

さすがはマネキンと呼ばれるだけはある、現実感から離れていた

アレがタイヤに潰されてゆく時、皮が腫れて腫れて、ついには裂けて肉がふき出した

綿なんて入っていないでは無いか

あいつはぬいぐるみでは無かったのだ

何故か疑ってしまう理由が分かった気がした




十四日目

鏡が割れて、ガラスが飛び散った

ジャリジャリ音がしている

足下の床が濡れていた

もう朝は静かになってしまうのだろう



×

罪を負わなくて生きられないこんな所に作った者こそ大罪人ではないのか、罰を与えられるべきではないのか



十※日目

何もしない奴は生きてはいけない

何もしない奴は死ぬしかない

何も出来ない奴は

何も出来ない奴は




満月◯日

空の電気が消えていた

小さなまん丸の電球が柔らかい光を放っていると、暗い中でも優しくあれた

空は綺麗だ



366日

神は生きていた


生かされていた


愛されていた


…らしい



18P〜19P 6行目 音読


地面は黒く、私たちの歩いている所は白い


奈落には落ちるのではない

奈落に落ちると思って地面にぶつかり、受け身を取れずもがき、苦しみ続けるのだ




終わりのあいさつ


私はカタツムリ

ぴょんぴょん跳ねて

雨を歌う

鳥は友達

殺されたって相入れない


刺身が半分

売れた魚は死んでいた


灯の消えた奥棚に

小さく隠れた余り物


口でひとつ呼吸して

脳はふたつ

腐った三つ目で

過去をみる

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神ヨ私ヨ万物ヨ N白 音々 @Nsironnn

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